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タリスマンが示したのは「発想力が高く他は平均的」というスピカの評価と、全項目が高いアリアの一等級のポテンシャルだった。夢を笑われて悔しがるスピカに、クロードは「いつかじゃない。今勝つんだ」と喝を入れる。そして舞台は海へ。島に隠された40個の宝石を、生徒同士で奪い合いながら日の出まで持ちこたえる試験が始まった。第17話「ファイナル・トライアル」を振り返る。




タリスマンが測るもの
「どうしてこんな差がついちゃったんだろう」
回想から始まるのがうまい。幼いスピカが「遠翼の竜、ドラゴンフレイム」と唱えても、何も出ない。周りの反応は容赦がなかった。「何も出ないじゃん」「期待したのに」「しらける」…そこへアリアが涼しい顔で魔法を成功させる。「アリアちゃん、魔法使えるんだ」「すごい」「覚えたばっかだけどね」「こんくらい楽勝かな」。
スピカの内心が、この関係の出発点である。「何よあれ、当てつけ?」「昔から私のやることすぐ真似してくるし」「でも魔法だけは絶対に負けたくない」「いつか必ずアリアに勝つんだから」…先に始めたのは自分で、真似してきたのは向こう。それなのに、追い抜かれた。この構図を頭に入れておくと、後半のアリアの態度がまるで違って見えてくる。
現在に戻り、授業で登場するのがタリスマンだ。「魔術師のポテンシャルを読み取り、可視化する魔道具だ」「炎の大きさで、5つの項目から長所と短所が分かる」…スピカの結果は「発想力が高く他は平均的」。さらにタリスマン本体が喋り出すのが面白い。「思ってたより普通」と言われつつ、講評は的確だった。「技術が低く、ヴァルゴマジックをまだまだ使いこなせていないと感じた」「知識を増やして発想力をさらに伸ばすといいと思う」…ところが締めが「ハーフツインは好みなので星3つで」で、「好みってクソレベルじゃないですか」と総ツッコミが入る。クロードのフォローが「まあ口はアレだが、見識は確かだ」なのも含めて、この魔道具はいい仕事をしている。
そしてアリアの番が来る。「全項目高いわね」「まあアリア天才だし」…評価も別格だった。「一等級のポテンシャル。生まれもっての才能」「美術、スポーツ、何をやらせても頂点を取るでしょう」「魔法を使うための知識も豊富で、非の打ちどころがありません」…おまけに「満足の星5です」。周囲が「アリアちゃん、一等級になれるんじゃない?」と沸く中、本人の返事はこうだった。「うーん、別に一等級とか興味ないし」。スピカの心の声が刺さる。「魔術師を目指し始めたタイミングは一緒だったのに、どうしてこんな差がついちゃったんだろう」。
落とせば実質落第
授業の締めで、次の試験が告げられる。「来週はいよいよ期末試験、ファイナルトライアルだ」「タリスマンの評価を生かし、対策を練るといい」…そして念押しが入る。「特にミドルトライアル不合格組はな」。
条件が重い。「不合格組はこれを落とせば進級試験が受けられない。実質落第になるから気合い入れろよ」…生徒の感想が「圧がすごい」で、まったく同感である。前回のミドルトライアルで取りこぼした者にとって、この試験は後がない。全24話という尺のちょうど折り返しで、逃げ場のない山を置いてきた形になる。
「一等級は私にとって強さの象徴だから」
朝になると吠える花
スピカの対策は真っ当だった。「よし、試験までとにかく対策あるのみ」「知識を伸ばして発想力を高めよう」…図鑑を開いて「花の種類や特性を覚えてるの」と勉強していると、アリアが現れる。「試験前で授業もないし、どっか遊びに行かない?」「対策しろよ」「何もしなくても余裕でしょ、スピカと違って」…相変わらずである。
ところが、そのあとの一言が妙だった。「でもまぁ、いつも意地悪言ってごめんね、スピカ」…素直に謝ってくる。スピカも面食らって「は? 何その余裕」と返し、内心では「なんかこの間からアリアに対する目が優しくなった気がする」と警戒している。
そのうえで始まったのが、ひどい出題である。「特別にアリアちゃんが勉強を見てあげる」「では問題です。朝になると吠える花は?」「そんな花あったかな」…スピカが「まさか朝ガオーで朝顔って言ってんじゃないでしょうね」「それ謎なぞだし」と身構えたところへ、正解が発表された。「ロズおじ」「誰だよ」「ロズおじは自分を花だと思ってて、光合成するために毎朝太陽に向かって吠えてるの」「知るか」…完全に時間の無駄である。「本当、何しに来たの」というスピカの呆れ声が正しい。
笑われたくなかった夢
その流れで、アリアが素朴な疑問を投げる。「てか、スピカってどうしていつもそんなに頑張れるわけ?」「だって、頑張っても頑張ってもいい結果が出なかったら辛くない?」「ドMなの?」…答えは即答だった。「そりゃ辛いけど仕方ないじゃない。一等級魔術師になることが私の夢なんだから」。
そこでアリアが笑ってしまう。「え? スピカ一等級目指してるって本気だったの?」「やっば!」…スピカの内心が「いくらアリアでも、この夢だけは笑われたくない」で、ここが今回いちばん痛い場面だった。慌てて「怒った? 冗談だし、ごめんって」と取り繕いつつ、アリアは核心を尋ねる。「どうしてそこまで一等級になりたいわけ?」。
返ってきた理由が、この作品の芯である。「私は強くなって、皆を守れるような魔術師になりたいから」…アリアの反論も、意地悪ではなく正論だった。「それ、別に一等級にこだわらなくてもよくない? 二等級以下でも十分強い人いるじゃん」。だがスピカは譲らない。「そうかもしれないけど、一等級は私にとって強さの象徴だから」「一等級になれば、胸を張って『なりたい自分になれた』と言える」…目標そのものより、そこに立つ自分を欲しがっている。この言い方だからこそ、笑われると刺さるのだ。
そして立場が反転する。「はいはい、ご立派な夢ですね」と流されて、スピカが聞き返した。「アリアは夢あるの?」「特にないけど」「夢なしよりマシでしょ」…その瞬間、アリアの表情が変わる。「は? 夢あるのがそんなに偉いわけ?」…スピカの内心が「アリアのこんな顔、初めて」だった。全項目が高く、一等級にも興味がなく、何をやらせても頂点を取れる少女の、たったひとつの空白がここで見えている。ネットでも「本当はスピカのことが好きなくせに、いちいち煽ってくる」と読む声が出ていたが、この場面を見るとむしろ持っていないものを持っている相手への反応に見える。
「いつかじゃない。今勝つんだ」
クロードの喝
腹の虫が収まらないスピカは、クロードに愚痴をこぼす。「アリア、私のこと見下しているんです」「いつも私がやること真似して、私よりもすぐに上に行っちゃうし」「自分が才能あるから、私の気持ちなんてわからないんです」…そして宣言する。「でも、いつか勝って絶対に謝らせてやる」。
返ってきた言葉が鋭かった。「いつかじゃないだろう」「君は心のどこかで、アリアに負けることは当たり前だと思っているな」…「いつか」という言い方そのものが、負けを前提にしている。指摘としてこれ以上ないほど的確である。
そのうえで、根拠のある励ましが来る。「タリスマンの評価は高くなかったかもしれないが、君は合宿や邪教徒との戦いを乗り越えた」「僕は数字以上の力を発揮できると見ている」…数値化された才能に、実地で積んだものを対置する。そして課題が跳ね上がった。「次のファイナルトライアル、合格だけじゃぬるい。アリアに勝て!」「いつかじゃない。今勝つんだ」。
さらに、この教師が食えないのは締め方である。「まあでも僕、教師だから、贔屓は良くないんでアリアにはスピカに勝てって言っておくわ」…両方に「勝て」と言う。これで二人とも降りられなくなった。ネットで「先生の煽りで一位を目指す事に」と要約されていたとおり、この試験の火をつけたのはクロードである。
ステージは海
当日、生徒たちは船に乗せられる。「今度は船に乗るのか?」「船内探検したいですわ」…そして宣言される。「ファイナルトライアルのステージは、海だ!」。目的地はアスピドケロンの島。「島が見えましたわー!」「よし、じゃあこの島でクロードカヴンは降りるぞ」…そして船は去っていく。「ここで降りたのはクロードカヴンだけか?」「他のカヴンは別会場なのかな」。
到着直後の小芝居が楽しかった。「早速だが、学校が用意した服に着替えてもらう」「服?」「まさか際どい水着とか?」…男子側から歓声が上がったところで一喝が飛ぶ。「そんなわけあるかー!」「さっさと行けー!」。実際に配られたのは制服を思わせる実用的な水着で、視聴者からも「水着、期待したのに…(涙)」という嘆きと「制服に似てる水着、全員よかった!」という賞賛が同時に上がっていた。ちなみに一部だけ意匠が違うのは「ポルックスがこっちがいいって言いやがるから」「だってかわいいじゃん」という事情である。
40個の宝石と、奪い合い
ルール説明が始まる。「今回の試験はトレジャーハントだ」「君たちにはこの島に隠された宝石を集めてもらう」…「海賊のか?」と沸く生徒に、「いや、宝石は学校が用意したものだ。持って帰らないでくれ」と釘が刺される。
条件は細かい。「全部で40個の宝石があるが、その種類によってポイントは異なる」「終了は明日の日の出まで」「成績は最終的に保有しているポイントによって決まる」…そして厄介なのがここだ。「今回はサバイバルも兼ねているからな。水や寝床は日が暮れる前に確保しとけよ」。合否の線も明確だった。「そしてポイントがゼロだった者は…不合格だ」。
最大の仕掛けが最後に置かれる。「ちなみに、今回の試験は生徒同士の宝石の奪い合いありだ」「取られないように気をつけろよ」…「いやらしい試験だな」という感想が全てである。この設計の意味を、生徒自身が言語化していた。「前回のミドルトライアルでは生徒同士協力することが主題だったのに、今回はポイントの奪い合い。個人での戦いになるってことだろ」「まあ、そっちの方が燃えるけどな」…協力を学ばせた次に、その相手から奪わせる。えげつないが、試験としては筋が通っている。
難易度についても釘が刺された。「宝石の場所のヒントとかないんですか」「詳しいことは支給されたカバンの中を見ろ」…そして「言っておくが、ここはただの島じゃない。ダンジョンだ」「ミドルトライアルより険しい困難な道のりだ」。実際、早々にサンドゴーレムが出現し、「大きさは入試時のゴーレムより上だ」と説明される。「他にもこの島にはトラップがたくさんあるぞ」「果たして無事に試験を終えられるかな?」…完全に楽しんでいる顔だった。それでも生徒の反応は頼もしい。「入試の時はビビりまくってたけど、もうあの時とは違う」「今回は本気出す」。クロードの締めが「みんな成長しているようだな」「だが、今回の試験ではっきりとカヴン内の順位が決まる」「果たして誰が一番に輝くのか」。
「ファイナル・トライアル」まとめと考察
全員が「一番」と言い出した理由
試験開始を前に、スピカが動いた。「アリア、あの夢、本気ってこと証明するから」「へえ、どうやって?」「誰よりも宝石を集めて、私がこのカヴンで一番になる」…アリアの反応は「やっぱスピカ面白いね」で、クロードの茶々が「みんなの前で宣言するとは、もう後には引けないぞ」。
ここから連鎖が始まるのがいい。「スピカさん、悪いですけど、一番になるのはこのレオですわ」「ま、ドベにはなりたくないよね」「やるからにはトップだな」…控えめだった者にも火がつく。「私は一番じゃなくても、不合格にならなければ」「おい、本気出すんだろ」「私は本気のお前と戦いたい」「負けないけどな」。ネットでも「みんなの前で宣戦布告しちゃったら…そりゃ触発されちゃうよ、全員が燃えてくる展開の競い合いは楽しい」と書かれていたが、まさにその通りの伝染だった。
そこへアリアが割り込む。「みんな何言ってんの。最強はアリアでしょ」…「確かに、タリスマンの評価はこいつが一番高かった」と誰かが認める。そして続いた台詞が、この回の答え合わせになっている。「正直、楽しめれば順位なんて何でもよかったけど」「アリアがサクッと一番取って、スピカの1位の夢も終わらせてあげる」…順位に興味がないと言っていた本人が、わざわざ一番を取りに行くと宣言した。理由はただひとつ、スピカがそれを夢だと言ったからである。
一方で、まったく別の戦略も提示された。「でも大丈夫、私はキロンの味方だから」「同盟を組むのも一つの戦略だよ」「確かに、1位にこだわらなければそれもアリだわ」…ところが当のキロンが噛みつく。「ふざけんな」「同盟って、宝石の譲り合いでもしろってか?」「お前も不合格組だろうが。俺の世話焼いてる場合か」「だいたい俺は一人でも一番取れるってのに、なめんな」…返された言葉が優しかった。「そうだったね。大丈夫、あなたならきっとやり遂げられる」「信じることも大事だって学んだのに」。それでも「サバイバル一人でもできる? 水や寝床に食料の確保も」と痛いところを突かれ、「言うじゃない、ヘタレ王子」と返す流れまで含めて、このカヴンの距離感がよく出ていた。
開幕はレオが持っていく。クロードが「先生は緊急時に備えてここで待機している」と説明している最中に、「こんなところでグダついている場合じゃないですわ!」「試験はもう始まってますわ」「みなさん、お先に!」と飛び出したのだ。「すごい跳躍」「先越されて黙ってられるか!」…全員が散っていく。スピカの決意が「ファイナルトライアル、今度こそ先生との約束を果たすんだ!」で、締めの引きが「狙うならポイントが高いダイヤ!」だった。
この回の設計で感心したのは、試験が始まる前に勝負が決まっていることである。前半は延々とタリスマンの数値と、スピカとアリアの温度差を積み上げるだけの回に見える。だが後半で全員が「一番になる」と言い出すのは、その積み上げがあったからだ。とりわけアリアの「楽しめれば順位なんて何でもよかった」という本音は、逆に言えば今回だけは順位に意味が生まれてしまったという告白でもある。「夢あるのがそんなに偉いわけ?」と表情を変えたあの瞬間から、彼女はもう降りられなくなっていた。そしてクロードは「贔屓は良くない」と言いながら、二人の両方に「勝て」と言っている。教師として公平を装いつつ、実際にやったのは二人を同時に本気にさせることだった。宝石を奪い合う試験の中身より、この火のつけ方のほうがよほど周到である。日の出まで、誰が何を持っているのか。次回からが本番だ。




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