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魔力検査の結果は、やはり白紙だった。ただし第5話は、そこで終わらない回である。名乗り出た第39代教皇メルヴィンが、カロリーナに宿るものを神聖力と呼ぶ。「滝のような量と勢いで、既に溢れ出している状態です」「力を垂れ流しているとでも言いましょうか」。タイトルが、ここでようやく回収された。同じ頃、聖女試験のフローラは泥水ひとつ浄化できず、自分の聖魔法が「カロリーナによって強化されたまがいもの」だったと気づいてしまう。そしてエドワードの「私は、カロリーナの一番の理解者でありたい」が、姉への本音を引き出した。




白紙のままだった魔力検査
「我の真なる価値を示せ」と、白紙のページ
結婚式もハネムーンも終えて、日常が戻ってきたところから第5話は始まる。マリエル嬢の一件が片付いた直後、テオドールが「カロリーナの魔力検査をする」と言い出した。前回の終わりで予告されていた再検査である。
使うのは本の形をした魔道具だ。「この本の上に手を置き、我の真なる価値を示せと唱えてください」と説明される。魔力適性があれば本に示され、魔力が全くなければページは白紙のままになるという仕組みだ。
「我の真なる価値を示せ」。カロリーナが唱えても、本のページは白紙のままだった。その場では誰にも説明がつかず、「私もこんなことは初めてで」という言葉だけが返ってくる。カロリーナが「じゃあ、私はやっぱり」と言葉を落としたところへ、エドワードが「結果など気にするな。カロリーナはカロリーナだ。魔力などなくても」と被せた。
検査が始まる前から「魔力の有無など些細なことにすぎん」と言い切っていたのが効いている。結果を見てからの慰めではないので、同じ言葉でも重さが違って聞こえた。
取り乱すテオドールと、名乗り出た第39代教皇
動揺したのはカロリーナ本人よりもテオドールだった。「ありえない。そんなはずありません」と食い下がり、「とにかくもう一度検査を」と繰り返す。エドワードに「どうしたテオ。そんなに取り乱すなんてお前らしくもない」と言われるほどの慌てぶりである。
そこへ「その必要はありません」と割って入る人物がいた。メルヴィン・クラーク・ホワイト、またの名を第39代教皇聖下である。公式のあらすじにある「教皇メルヴィン」がこの人だ。
教皇は「検査結果は私が保証しましょう」「魔力はありません」と言い切り、そのうえで「ですが、魔力とは別の特別な力を持っておいでです」と付け足した。そして頭を下げ、「お会いできて光栄です、神の愛し子よ」と呼びかける。
いつも落ち着いているテオドールが取り乱し、取り乱すはずのカロリーナのほうが静かだった、という並びが良かった。テオドールの慌て方には理由があって、それは少し後で見えてくる。
神聖力、ついに回収されたタイトル
「力を垂れ流しているとでも言いましょうか」
カロリーナが「私に教皇聖下と同じ力があるというのですか」と問うと、教皇は認めたうえでこう続けた。「とはいえ、カロリーナ妃殿下の神聖力に比べれば、私の力など取るに足らないものです」。
量の説明がまた極端である。「滝のような量と勢いで、既に溢れ出している状態です」。そして、こう言い添えた。「力を垂れ流しているとでも言いましょうか」。
第1話からタイトルに書いてあった「無意識に力を垂れ流す」が、ここで作中の言葉として出てきた。五話かけてタイトルを回収したことになる。
回収の仕方が良かった。カロリーナが何かを成し遂げたからではなく、第三者が測って「多すぎる」と評しただけで、本人には最後まで実感がない。無自覚という土台を壊さずに、正体だけを明かした形である。
三つの効果と、無自覚だった理由
教皇が挙げた神聖力の効果は三つ。病や怪我を治す治癒の力、荒れた大地を豊かにし汚染されたものを清める浄化の力、そして他人の魔力を増幅させる力である。
ここから逆算が始まる。「今までセレスティアが繁栄してきたのは、カロリーナ妃殿下の神聖力によるものだった」という理解に届き、教皇も「これだけの神聖力です。影響は国中に及ぶでしょう」と認めた。
では、なぜ本人が気づけなかったのか。答えは「無自覚に力を行使していたせいでしょう」だった。魔物は神聖力を嫌うので寄ってこない。浄化は意識しなくても作物や水に影響する。残る治癒と増幅の発動条件は「強いて言うならば、気持ちでしょうか」「助けたいや、死にたくないなど」だという。
これで過去の場面にも説明がついた。魔力を暴走させてしまった団員たちも、カロリーナの力によるものだったということになる。さらに、この場に教皇がいたのは偶然ではなく、テオドールが事前に連絡を入れていたからだった。カロリーナの「いつの間に」が、そのまま視聴者の反応でもある。
テオドールが先に教皇を呼んでいたと分かると、さっきの取り乱し方の見え方も変わってくる。何かを疑って呼んだのか、念のためだったのかまでは今回語られないが、この人だけが一手先を打っていたことは確かだ。
同じ頃、聖女試験に臨んでいたフローラ
泥水ひとつ浄化できない次期聖女
場面はセレスティア王国に飛ぶ。フローラは聖女試験の一次試験を難なく突破し、二次試験に臨んでいた。「問題はここから」という独白から始まるので、本人にも自覚はあった。
試験官はジョナサン・ミルス、セレスティアただ一人の大司教である。フローラの見立ては辛辣で、「実態は金儲けと保身にしか興味のないクズ野郎」と切り捨てていた。
課題は単純だった。「さあ、この泥水を浄化し、真水に変えてくれ」「次期聖女と歌われる君なら、この程度楽勝だろ」。ところがいつものように魔法を発動させたはずなのに、泥水は濁ったままだった。
「生まれた時から成功を約束された私に、失敗なんてあってはならないの」という独白が刺さる。前回の終わりに瓶の泥水で既に兆候が出ていたので、彼女にとっては二度目の失敗になる。
仮説を差し出して、落第を買う
追い詰められたフローラが口にしたのが「仮説」という言葉だった。大司教はそこに食いつき、「仮説とは何だ。答えろ」と迫る。
そして持ちかけられたのが取引である。「ならば、貴様が思い描く筋書きで試験に落ちたことにしてやる。それで貴様のイメージも維持できるだろう」。その代わりに仮説を教えろ、という条件だ。
フローラは「今大切なのは、私のイメージを保つこと」と割り切り、話し始める。自分の魔力の低下と、今セレスティアで起こっている様々な災厄、その両方の説明がつく唯一の仮説が、カロリーナの神聖力だった。姉のほうが、自力で答えにたどり着いていたことになる。
同時に、彼女は自分の足元も理解してしまった。「今まで私が自分の才能だと思って使っていた聖魔法は、カロリーナによって強化されたまがいもの」。続く「なんという屈辱」が本音だろう。
帝国側が「まだ発表しない方が良い」と口止めを決めた、ちょうどその頃の出来事である。しかも渡した相手が、国で一番口の軽そうな人物だった。
買わなかったパパラチアサファイア
姉の瞳と同じ色
帝国では、エドワードとカロリーナのもとに町一番の宝石商が呼ばれていた。「王家の方々に相応しい石を選ばせていただきました」と並べられた中から、カロリーナはパライバトルマリンを選ぶ。
問題はそこではなかった。パパラチアサファイアを見たとき、カロリーナは「お姉さまの瞳と同じ色」とつぶやき、それだけ買わなかった。
エドワードはこれを見逃さなかった。「いつも嬉しそうに父親の話をするのに、姉の話はあまりしない」という以前からの引っかかりと、目の前の一言が結びつく。
買わなかった、という描き方が上手い。嫌いだと口に出すより、選ばれなかった石が一つ残るほうが、よほどはっきり伝わってくる。
「カロリーナの一番の理解者でありたい」
エドワードは「お前は、姉のことが嫌いなのか」と直球で聞いた。「もし気分を害したのならすまない」と断りを入れる丁寧さもある。
カロリーナの返しは「してどうするんですか」だった。話したところで何も変わらない、という諦めが滲む。それに対する答えが「どうすることもできない。私は知りたいんだ」である。
そして、この回で一番の台詞が来る。「私は、カロリーナの一番の理解者でありたい。だから教えてほしい。カロリーナのすべてを」。
カロリーナはようやく「私は、姉のフローラが嫌いです」と言葉にした。「表ではいい姉を演じつつ、裏ではいつも私をバカにして」「出来損ない」と、飲み込んできたものが出てくる。エドワードは「辛かったな、よく頑張った」「だがもう大丈夫だ。必ずカロリーナを守ると誓おう」「我慢しないでいい」と受け止めた。
解決策を出さないのが良かった。「どうすることもできない」と先に認めたうえで、それでも知りたいと言う。第3話でカロリーナがオーウェンを掬い上げたときと、同じやり方をエドワードがしている。
ギルバートのために手を挙げる
公表は見送り、それでも申し出た治療
神聖力の扱いについて、まず決まったのは当面は公表しないという方針だった。理由は明快で、「神聖力の持ち主は希少価値が高い上、強力な能力を秘めています」「そんな力を他国が放っておくとは思えません」。セレスティアの国内問題が落ち着くまで待つことになる。
皇帝夫妻への報告の場では空気が緩んだ。「可愛い娘が神聖力の持ち主だなんて、我々も鼻が高い」「もちろん神聖力がなくても、可愛い娘に変わりはないけど」と言われ、「エドワード、しっかりカロリーナを守るのよ」と念を押される。
そこでカロリーナが手を挙げた。「私の神聖力で、ギルバート殿下の病を治療することはできませんか」。根拠もある。「ギルバート殿下の病は、教皇聖下が神聖力で治療を行っていると聞きました」「私にも手助けができるかもしれません」。
エドワードの「カロリーナが兄を」という反応が短くていい。驚きと嬉しさが同時に来ている。自分では手の届かなかったところに、妻が最初の一歩を置いた形だ。
手のひらに神聖力を集める数日間
テオドールの返答は現実的だった。「マナ過敏性症候群の治療には、繊細な技術が必要となります」。魔法の心得がないカロリーナには、当然そこが壁になる。
そこで出てきたのが「覚悟はよろしいですか」からの「特訓です」だった。内容は「自分の神聖力を感じ取って、手のひらに集めてください」。集めた神聖力は植木に与えて確かめる。
教皇によれば神聖力の注入がマナ過敏性症候群の唯一の治療法であり、まずは力の扱いに慣れる必要があった。数日後、テオドールは「まだ数日の練習にしては良いペースです」と評価している。
カロリーナの動機がはっきり言葉になっているのが良かった。「もしギルバート殿下の病が治れば、エドワード殿下も派閥問題で悩む必要がなくなるんですよね」。人助けと夫のため、その両方が正直に並んでいる。
ダイヤモンド宮殿で起きたこと
皇帝への道を諦めていた第一皇子
ここでギルバートの半生が語られる。「私は物心がつく前から次期皇帝として育てられてきた」。ところが子供の頃には治るはずのマナ過敏性症候群は、年を重ねるごとにひどくなっていった。
後継者を巡って貴族たちの意見は割れ、父は難しい決断を迫られる。「そんな中で、エドワードからの手紙は私の唯一の救いだった」という一言で、兄弟の関係が一気に分かる。そして「唯一安全なダイヤモンド宮殿に閉じ込められたまま、私は大人になっていった」。
そこへ母が訪れ、重い報せを告げた。「エリックが半年後に、次期皇帝を決める宣言をしたわ」。ギルバートは「半年という時間を設けたのは、私への最後の恩情でしょうか」と受け取るが、「違うわ」「ただエリックは、あなたにもチャンスをあげようと」と否定される。
それでも「チャンス。病を治す方法も見つかってないこの状況で」と力なく返し、泣く母に「泣かないでください母上」「私は大丈夫ですから」と告げた。皇帝になるべく育てられた彼は、こうして皇帝への道を諦めた。
この回想を治療の直前に置いたのが効いている。諦めた人のところへ、諦めさせない力が届く、という順番になっている。
「師匠は、私の救世主だよ」
治療当日、テオドールはカロリーナにこう言った。「あなたは教皇聖下でも難しい技術を、短期間で身につけました。これは誇るべきことです」。そして「もしそれでも不安なら、自分自身ではなく私を信じてください」と続ける。魔力持ちの彼は宮殿の中まで入れないので、送り出すところまでが役目だ。
迎えたギルバートは軽やかだった。「エドワードとの新婚生活はどうだい」と聞き、近づこうかと気を遣い、「私の治療なのに協力だなんて」「君はおかしな子だね」と笑う。
注入そのものは難しかった。「想像していた以上に神聖力をコントロールするのが難しい」「集中力が持たない」と、カロリーナは限界近くまで削られる。それでもギルバートの反応は劇的だった。「問題ない。いや、それどころじゃないな」「私は、驚くくらいに気分がいいんだ。こんなの子供の頃以来だよ」。
仕上げに魔道具を使っても、体調に異常は出ない。「初めてだ。マナの存在すら感じられないなんて」。あの教皇聖下ですらここまで症状を改善できなかった、と本人が言う。そして「君のことを師匠と呼んでも構わないかい」「師匠は、私の救世主だよ」。
取り乱したことを詫びた直後に「さっき言ったことは全部本当だよ」と念を押し、「私は、皇帝になるのはもう無理だと諦めていたんだ」と打ち明ける。半年という期限が、ここで意味を変えた。
「秘められた神聖力」まとめと考察
無自覚だったのは、カロリーナだけではない
今回のサブタイトルは「秘められた神聖力」。力の正体が明かされる回だが、面白いのは秘められていたのが力そのものより「誰の力だったか」だった点だと思う。
セレスティアの繁栄も、フローラの聖魔法も、団員たちの魔力暴走も、出所は同じだった。カロリーナは自分の力に無自覚だったが、周りもまた、恩恵の出所に無自覚だったということになる。
三つの効果のうち、物語を動かしているのは増幅だろう。治癒と浄化は誰かを助ける力だが、増幅だけは離れた瞬間に、相手から取り上げる形になる。カロリーナが帝国へ嫁いだだけで、セレスティアが傾き、姉が失墜した。
悪意がどこにもないのに国が傾いていく、という構図がこの作品らしい。カロリーナは何もしていないし、するつもりもなかった。
半年後の宣言と、動き出したもの
次に効いてくるのは半年後の後継者決定だと思う。ギルバートは治療の直後に他国へ送られ、社交界へ復帰するためのパーティーに出席することになった。テオドールいわく「派閥問題の解決も今回のパーティーにかかっている」。
つまり諦めていた第一皇子が、半年の期限内に表舞台へ戻ってきたわけである。エドワード自身は王位を継ぐ気がないと言い続けてきたので、兄の復帰は彼にとっても望んだ形になる。
一方で不安なのが情報の流れだ。神聖力は公表しないと決めたのに、その頃には既に大司教へ渡っていた。「勘の鋭い輩が出てきたら面倒ですが」という言葉が、そのまま現実になっている。
しかも渡したのが実の姉で、受け取ったのが「金儲けと保身にしか興味のない」と評される人物である。そんな力を他国が放っておくとは思えないという懸念のほうが、先に現実味を帯びてきた。
カロリーナの最後の言葉は「私の力で解決できるかどうかは分かりませんが、精一杯頑張らせていただきますわ」「エドワード殿下のためにも」だった。守られる側から、支える側へ回りつつある。ただし本人は、自分がどれだけ大きなものを動かしているかを、まだ知らない。




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