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目覚めればそこは、目指し続けたプレアデス監視塔の中。仲間は全員無事、そして「お師様!」と抱きついてくる謎の美女シャウラが待っていた。塔の真の姿は、何でも探せる大図書館プレアデス。書庫への資格を懸けた三層タイゲタの試験で、スバルの星の知識が星座の謎解きに挑む。第70話を振り返る。




監視塔の中で
悪夢からの目覚め
ペテルギウスとレグルス。かつての宿敵たちに責め立てられる悪夢から、スバルは竜車の中で飛び起きる。傍らのベアトリスが告げたのは、待ち望んだ報せだった。全員無事に合流し、一行はすでにプレアデス監視塔の内部に到達していたのだ。
エミリアは心配のあまり二晩眠っていなかったという。地下での地獄を思えば、この再会はあまりに尊い。だが安堵に浸る間もなく、部屋に飛び込んできた影があった。
よりにもよってあの二人が夢に出てくるアバンは、思えば周到な伏線だった。前回の惨劇からの落差で、仲間の顔ぶれを眺めるだけで泣けてくる幕開けだ。
「お師様」と呼ぶ少女
「やっと見つけた、お師様!」。スバルに全力で抱きついてきたのは、露出度の高い装いの美女。監視塔の星番を名乗るシャウラだ。エミリアは「なんだかすごーくモヤモヤしたの」と頬を膨らませ、ラムは「鼻の下が伸びているわよ、バルスケベ」と辛辣に刺す。
それまでほとんど喋らなかった彼女がスバルにだけメロメロなのは、「余計なことは言わない、話さない、教えない」というお師様の言いつけを400年守っていたからだという。人違いを疑うスバルだが、シャウラに迷いはない。
シリアス街道まっしぐらの監視塔編に、突如投下された超ハイテンションガール。嫉妬するエミリアと毒を吐くラムまで含めて、賑やかさが一気に戻ってくるのが嬉しい。
賢者と呼ばれた存在の正体
賢者は、シャウラにあらず
だが話を聞くほど食い違いが増えていく。世間で「賢者」と呼ばれるのは自分のことらしいが、シャウラ本人は「賢者シャウラならアシにもよく分かんねっす」ときょとん顔。硬貨に刻まれた三英傑の賢者の姿とも似ても似つかない。そのくせ「棒振りレイドと皮肉屋のボルカニカは古馴染みっす」と、初代剣聖と神竜を呼び捨てにする。
初代剣聖レイドはとうに寿命で世を去ったと聞かされ、「殺しても死なないような奴だったのに」と驚くシャウラ。そしてスバルを見分けた根拠は見た目ではなく、「鼻が曲がりそうなドス黒くてエグい匂い」だという。
400年を生きる番人の口から、伝説の英傑たちの素顔がポロポロこぼれるのが楽しい。一方で、スバルの「匂い」への言及は不穏そのもの。彼がまとう魔女の香りと無関係とは思えず、笑いの裏に棘が残る。
お師様の名は、フリューゲル
あなたのお師様は何者なのか。ラムが「トイレの便器に頭をぶつけていろいろ抜けたのよ」とスバルの記憶喪失をでっち上げると、シャウラは疑いもせず大発表してくれた。お師様の名はフリューゲル。あの大樹に名を残す伝説の賢者その人である。
スバルがフリューゲルでないと知れたら、彼女がどう出るか分からない。一行は誤解をあえて解かない道を選ぶ。ちなみにシャウラは竜車を「ひょいって」持ち上げて塔へ運んだ怪力の持ち主。自慢の髪型はポニーテールではなく「スコーピオンテールっす」とのこと。
木を植えた以外に何をしたのかよく分からない、とベアトリスに評される賢者フリューゲル。その名を騙り続ける綱渡りと、さらりと挟まれる「スコーピオン」という単語。後の謎解きへの布石が実に巧妙だ。
大図書館プレアデス
塔の真の名前
シャウラいわく、プレアデス監視塔は「仮の名前、仮の役割」。お師様が戻った今、ここは元の役割に戻るという。その正体は、知りたいこと、気づきたいことを何でも探せる大図書館プレアデス。レムを取り戻す答えが、この塔のどこかにある。
レムとパトラッシュが眠る緑の部屋は、住み着いた精霊が中の生き物の傷や病を癒やす特別な場所。大怪我をしていたパトラッシュも治療中だ。だが「傷でも病でもないものは癒やせない」。レムの眠りは、ここでも解けない。「見守るぐらいしかできないけどね」と付き添うラムに、スバルは「お前が見守ってくれることに意味があるんだよ」と返した。
希望の器を見せながら、レムだけは癒やせないという線引きが残酷で上手い。妹を思い出せないままレムの傍らを選ぶラムの姿に、あの地下での慟哭がまだ響いている。
400年の番人と、新しい命令
五層から砂丘を見張り、塔に近づく者を片っ端から撃ち落とす。あの悪夢のような狙撃の主は、やはりシャウラだった。全てはお師様の言いつけ。「聞くも涙、語るも涙」の渇きの日々を、彼女は400年続けてきたのだ。
ならばと、スバルは新しい命令を与える。「俺と仲間たちに気が付いたら、危害を加えるな、絶対に」。シャウラは「了解したっす! 守るっすよ! 超守るっすよ!」と快諾した。
あれほどの脅威が言葉ひとつで味方になる、この落差にゾッとする。裏を返せば、命令次第でまた牙をむくということ。400年独りで塔を守り続けた健気さといい、シャウラというキャラクターの底がまるで見えない。
「白い星空のアステリズム」まとめと考察
シャウラに滅ぼされし英雄
三層タイゲタは、書庫に入る資格を試す試験会場。無数の石板、スバルいわく「モノリス」が立ち並び、触れると謎かけが響く。「シャウラに滅ぼされし英雄、最も輝かしきに触れよ」。闇雲に触れても答えには至らず、一同は丸一日足止めされていた。
本人に聞けば早いかと思いきや、「殺したやつの名前をいちいち覚えてるなんざ二流の仕事」とシャウラは役に立たない。初代剣聖レイドの人物評を求められ「人間のクズだったっす」と即答し、騎士道の徒ユリウスを凍りつかせる一幕も。だがスバルは気づく。この試験は、シャウラを倒して塔に入った挑戦者にも解けるはず。つまり答えは彼女個人ではなく、もっと普遍的な何かだ。
シャウラ=サソリ、監視塔=プレアデス。名前そのものが謎解きの鍵になっていく構成は、原作屈指の完成度だと思う。レイドの酷評とユリウスの絶句という笑いを挟みつつ、視点をひっくり返す誘導が見事だ。
俺だったら、リゲルを取る
スバルの故郷で、シャウラは星の名前。意味は「サソリの針」。調子づいた英雄オリオンはサソリに刺されて星になった、という言い伝えまである。星を形に見立てるアステリズム、すなわち星座の考え方で上からモノリス群を見下ろせば、そこにはオリオン座が広がっていた。
残る問題は「最も輝かしき」の解釈だ。オリオン座で最も輝く星の候補は二つ。常に明るいリゲルと、時折強く光る変光星ベテルギウス。「俺だったらリゲルのほうを取るがな」。スバルの選択は的中し、一行は書庫に入る権利を勝ち取った。
ベテルギウスとペテルギウス。冒頭の悪夢がここで効いてくるのだから、しびれるほかない。幕間ではスバルが眠る丸一日の裏側も描かれ、寝ぼけたスバルに抱き枕にされていたラムが「汚名」返上に燃える笑いも。次はいよいよ二層。塔の試験はまだ始まったばかりだ。










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