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S級遺物未来記の予言を、偽りのデートで丸ごと書き写させた遼河。読み解いた一節が指すのは、ラスベガスの地下オークションマイダスだった。金の斧でジャックポットを連発して資金を稼ぐ彼の前に現れたのは、近くにいるだけで災いを振りまく破産王アイリーン・ホルトン。だが未来の悪名とは裏腹に、本人はどこまでも善良な令嬢で…。特別出品の帝王の不老草を巡り、仇敵大河原泰政との競りが幕を開ける。




未来記の所有者、佐々木由香への接触
偽りのデートと、書き写された予言
開幕は日本。遼河が近づいたのは、S級遺物未来記の所有者・佐々木由香だ。軍の連中は君を道具扱いしている、俺と君であいつらを困らせてやろう…監視付きの彼女を優しい顔で連れ出すが、もちろんデートは口実である。目を合わせた相手の未来が読める由香は「この人が私を呪い殺すなんて嘘ね」と油断するものの、部屋に着いた途端に本性が出た。「さあデートを始めるとしようか。未来記を出せ。見えた予言をすべてこれに書き写せ」。
腕のタトゥーに触れて唱えれば未来記を呼び出せる、という基本まで遼河の方が詳しいのだから、由香に勝ち目はない。「腕が痛くてもう書けません。未来記欲しいならあげますから」と泣きが入っても、「ダメだ」「ペースが落ちてる」と容赦なし。イケメンに優しくされてうっかり騙された、という由香の心の声には同情しかないが、この徹底した悪党ぶりこそ本作の芸風である。
S級は奪えない。ならば盗むのは中身
なぜ未来記そのものを奪わないのか。遼河の説明が今回の肝だ。未来記はS級の英雄伝説クラス。無理に支配しようとすれば大きなペナルティを課される。等級の低い村正の時とは違い、腕一本では済まされないのだ。だから奪うのは物ではなく、そこに書かれた未来の情報。サブタイトル「未来を盗んだ者」の意味が、ここで効いてくる。
やがて騒ぎを聞きつけた軍人たちが踏み込んでくるが、遼河は慌てない。「餅でも食ってろ。とんでもなくうまいと思うぞ」と放り投げた餅に、兵士たちは「なんていい匂いだ」「俺の餅だ」と我を忘れて群がり、その大混乱の隙に悠々と消えてみせた。後日、何者かのもとへ「未来記が破壊された。現場の軍人たちもやられた。たった一人の仕業」という報告が届く。報告を受けた人物は「見つけて処理しますか」という部下を制し、こう呟く。「仲間に引き入れよう。きっと使える」…遼河を巡る包囲網が、静かに形を変え始めている。
予言が指すラスベガス、狙いは仇敵
「地下の欲望の園で木が熟す」…マイダスへ
書き写させた予言の束は宝の山だった。全世界が墓に飲み込まれた大古墳のような過去の記録に混じって、目を引く一節がある。「1月、地下の欲望の園で木が熟す。そこから世界を混沌に陥れる大きな災いが始まる。そこで、汝の欲望をよく知る神が汝と共にあらんとする」。遼河はこれを、ラスベガスの地下オークションマイダスを指した言葉だと読み解いた。
参加者を洗えば、イニシャルが「JK」の人物は3人。その中に、見覚えのある顔があった。大河原泰政…自分を死地へ追いやった仇敵が、偽名ジャック・ケイマンで潜り込んでいるのだ。「奴が来てるなら、かなりの上物の遺物が出品されるはずだ」。ただ、出品目録にあるのはハムラビ法典にシェイクスピアのペン、マリー・アントワネットのネックレスと豪華ではあるものの、予言にあった神クラスの遺物が見当たらない。この違和感が、終盤への布石になる。
金の斧のキーホルダーと、ひと稼ぎ
問題は先立つものだ。マイダスの競りは最低でも10億からという世界で、今の遼河は金がない。だが場所はラスベガス。「さあ、ひと稼ぎしようか。金は周りに山ほどある」。カジノに乗り込んだ遼河は、台を選んではジャックポットを連発する。不審がる店側に見せたのは、お土産のキーホルダー…に姿を変えた金の斧だ。財宝を引き寄せる力を、そのまま台選びに使ったのである。第2話で強奪した遺物をこう回すか、という発想の勝利で思わずニヤリとした。
上機嫌の場内に、通路を空けさせて練り歩く一団が現れる。その中に、記憶より若いが見覚えのある顔を認め、遼河は大河原泰政の来場を確信した。「この頃はまだ俺を知らないはずだ。覚悟しろ大河原。今回のオークション、上物の遺物はすべて俺様がいただく」。復讐の第一幕に、静かに火が入る。
破産王アイリーン・ホルトン
銀の斧が鳴らした警報
異変はカバンの中から始まった。財宝の匂いを嗅ぎつける金の斧に対し、銀の斧は主の財宝を狙う敵を見つけ出す。その銀の斧が反応した直後、場内で騒ぎが連鎖する。金を盗まれたと騒ぐ者、急な災難の報せに青ざめる者。さっきまで平穏だったカジノが、一気にただ事でない空気に変わっていく。
元凶は、大財閥ホルトン家の末娘アイリーン・ホルトン。未来を知る遼河には、その名に重なる悪名がある。かつての世界で神クラスの遺物の持ち主は「王」の異名で呼ばれ、中でも彼女の別名は破産王。近くにいるだけであらゆる災いが降りかかり、人々は財産を失って病を患い、企業は倒産する。関わらないのが一番…のはずが、当の本人がジャックポットの噂を聞きつけて「秘訣を教えてほしいんです」と突撃してくるのだから世話がない。
俺の知る破産王と、ずいぶん違う
ところが話してみると、印象がまるで違う。彼女の望みは一攫千金ではなく、「運を良くして、周りの人を幸せにしたい」。自分の周りで人が不幸になっていくことに心を痛め、その原因を自らの運の悪さだと思い込んでいる。遺物のことは何一つ知らないらしい。人々を破産に追い込み世界を混乱に陥れたあの破産王が、芝居でもしているのか…と疑う遼河の前にいたのは、ただの善良な令嬢だった。
ここで浮かぶ推測が切ない。もともとの破産王はこんなふうに善良だったのに、不幸の遺物に勝手につきまとわれ、人生がこじれた末に性格まで歪んでしまったのではないか。しかもこの遺物、主人の気分が良くなるほど不幸の力を増す質の悪さだ。悩みを打ち明けて楽になれたと彼女が微笑んだ途端、会場が地震に見舞われる場面が象徴的で、サイコパスのような遺物だなという遼河の評に深くうなずいた。悪名の裏にあった善良な素顔。アイリーンの見え方が、この回で一変する。
耐性の数値と、「むしろ好都合」
では、なぜ遼河は平気なのか。心当たりは、かつて銀の玉を飲み込んだ時に手に入れた力。破産王の攻撃を受けるたび、耐性の数値が上がっていくのを遼河は感じ取る。そうと分かれば話は早い。無理に遠ざける必要はない。そばにいるだけで耐性が育つならむしろ好都合…おまけに彼女を連れて歩けば、オークションのライバルたちは勝手に災難へ見舞われていく。
かくして「取引の話をしましょう」と持ちかけ、アイリーンを会場へ同伴する。善意の令嬢を歩く災難として運用する外道ぶりだが、当の本人が「はい、ご一緒させてください」と嬉しそうなのが何ともいえない。悪党の算段と彼女の純粋さの落差が、このコンビの持ち味になりそうだ。
「未来を盗んだ者」まとめと考察
狂乱の競りと、帝王の不老草
オークションが始まると、破産王の力が盤面を支配する。急に降りかかった災難への対処で参加者の3分の2が会場を後にし、残った者たちも彼女の機嫌が上向くたびに理性を失い、あらゆる品物に執着し始める。その中で大河原だけは、支配力の高さゆえか揺らぎもせず淡々と落札を続けた。自社工場の火災の報せにも席を立たない…つまり、何か狙いの品があるということだ。遼河は、奴がガラクタ同然の品を欲しがるたびに値を吊り上げて意趣返ししつつ、時を待つ。
そして最後に運ばれてきたのは、目録に載っていない特別出品…神秘の苗木、帝王の不老草だった。神クラスの遺物が目録にない、という序盤の違和感がここで回収される。「あれは絶対に手に入れないと。だが大河原も必ず動くはずだ」。価値を尋ねるアイリーンには「あなたの問題を解決するためにも必要なんですよ」と調子を合わせつつ、内心では「騙してるようで悪いが、今は後先を考えていられない」。この後ろめたさと非情さの同居が、遼河という男の輪郭をくっきりさせる。
第4話「未来を盗んだ者」は、タイトル通り、情報こそ最強の遺物だと見せつける回だった。予言を盗み、金運を引き寄せ、破産王の災いすら自分の追い風に変える。次回は不老草を巡る大河原との直接対決になりそうだ。あの遺物だけは仇敵の手に渡してはいけない…成り上がりと復讐の第二幕が楽しみである。




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