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第5話は、地下で分断された一行がリーザの里の本当の成り立ちにたどり着く回である。地底にあったのは魔晶石の鉱脈と、そこで死ぬまで働かされる人々、そして死んだ者からアンデッドを生み出す実験場だった。数年前の魔獣襲撃は、ヤコフの偽装だった。すべては「あのお方」の指図で動いていたと明かされ、最後にその名が一度だけ呼ばれる。




分断された地下で、助けに来たのは
落ちていくアリアンとポンタを掬った忍び
第4話の幕切れで地下へ降りた一行を待っていたのは、無数のアンデッドだった。アークが応戦のさなかにロックファングを放ったところ岩盤が崩れ、一行はアークとイビン、アリアンとポンタの二手に分断されてしまう。
落下していくアリアンとポンタを受け止めたのは、同じくリーザの里を調べていたチヨメだった。助かったわ、ありがとう。でもどうしてここに。その問いに返ってきたのが、刃心一族もリーザの里の話を聞きつけ、怪しいと睨んでいたという答えである。
派遣されて潜入したところで死の穢れを感じ、そこへ皆の声が聞こえてきたのだという。獣人も死の穢れを感じることはできる。ただしエルフのように目で見ることはできない、という違いが添えられた。
第4話で「訓練を受けた者でないと気づけない」と説明された感覚に、ここで種族ごとの精度差がつく。設定を戦闘の合流理由として使ってくる組み立てが気持ちよかった。
洞窟で地形魔法を使うなと、また言われる
一方のアークは、合流したイビンに叱られていた。地形魔法は地盤に影響を与えるから、洞窟や閉じた場所では使わないと教わらなかったのか。返事が情けない。そういえば以前にも、アリアン殿に注意されたような。
崩落の原因は、まぎれもなく本人である。しかも同じ注意を受けるのはこれが初めてではないという念押しつきだ。規格外の強さを持ちながら、こういうところで抜けているのがこの主人公らしい。
それにしても、なんでこんなところにアンデッドがいるのか。疑問はそのまま調査の方針になる。探ってみる必要がありそうだな、という一言から、この回の本題が始まった。
変な虫がついてないか見に来ただけ
「アリンちゃんは基本に忠実すぎるの」
アリアン殿とポンタは無事だろうか。アークの心配に対するイビンの返しが良かった。アリンちゃんなら心配いらないわ。何たって私が鍛えたんだから。
よほど信頼しているのだな、と言われた直後に、評価はきっちり辛口になる。アリンちゃんは真面目だからね。基本に忠実すぎるの。あれで本当にやっていけるのかしら。第4話の手ほどきで完勝しておきながら、その先をまだ心配している姉である。
それで今回は共に任務を、と尋ねられての答えが決定的だった。いいえ。変な虫がついてないか見に来ただけ。ここまで来ておいて、任務ではなく妹の身辺調査だと言い切ってしまう。
この一言が、そのまま今回のイビンの立ち位置になっている。彼女は事件を解決しに来たのではなく、アークを値踏みしに来ている。だから終盤の一言が効いてくるのだと、後から分かる作りだった。
チヨメが持ち帰った報告と、ヒルク教の名
合流を待たずに、チヨメの調査結果が共有される。以前に相対した魔獣使いと同じように、魔獣を使ってエルフや獣人、人族をさらう輩が他にもいた。そしてさらわれた者たちは国外ではなく、ローデン王国内のある場所に集められているらしいという。
それがここか、という問いに、はい、と短い返事が返る。さらに引っかかるのがヤコフの出自だった。国外で商人をしていたことは知られているのに、どこの国の商人だったのかがどれだけ調べても分からない。手がかりがまるで掴めない、という報告そのものが不吉である。
エルフ族の救出と解放も進んでいない。貴族や商人から解放された者が、またすぐ別の者にさらわれるということまで起きているらしい。
そして新しい名前が出る。ヒルク教。神に祈りを捧げ平和を願う、ごくありふれた教義の宗教とされているが、エルフや獣人を人間より劣る存在として、その排斥を推奨している。ローデン王国内でも密かに信者が増えているという。
拉致の連鎖と、排斥を説く宗教の拡大が、同じ会話の中に並べて置かれた。個々の悪党の話が、いよいよ社会の構造の話に変わっていく。ここが今回いちばん大きな地ならしだったと思う。
魔晶石の採掘場
これだけの量があれば、国の財政が潤う
地下を進んだアークとイビンが行き当たったのは、魔晶石の採掘場だった。魔晶石、と聞き返したアークにイビンが呆れる。知らないの、あなた今までどうやって生きてきたの。
説明は実演つきだった。これに火をつけてみて、と渡された石が燃える。魔晶石は燃料として使われている。そしてこれだけの量があれば、交易で国の財政は相当潤うでしょうねという規模感まで添えられた。
骨格だけの体で異世界を旅している主人公が、この世界の常識では初歩に当たる知識を持っていない。笑いどころとして流れる場面だが、同時にアークが本当によそから来た存在であることを思い出させる。
「実験場に運んどけ」
採掘場で働かされていたのは、さらわれた者たちだった。そこ休むな、と飛ぶ声。そして倒れた二人を見たイビンが息を呑む。消えたエルフたちよ。連れてきたばかりだったのに、と監督役は舌打ちする。
続く指示が、この回でいちばん嫌な一行だった。実験場に運んどけ。働けなくなった者を運ぶ先が、療養所でも墓でもなく実験場だという。
奴ら許せんな、早くなんとかしないと。怒りの理由がはっきりしているぶん、動きも速い。実験場とやらを突き止めましょう、と方針が決まる。
採掘場という絵面だけでも十分にきついのに、そこがまだ最悪ではないと分かってしまう。この段取りの置き方が本当に嫌で、そして上手い。
実験場という名の、死体置き場
オーバーヒール
たどり着いた先は、死体置き場にしか見えなかった。やつらは実験場と言っていたが、という言葉が宙に浮く。そこへポンタを連れたアリアンとチヨメが合流し、ようやく全員が揃った。
紹介の一幕が挟まる。この子は、と尋ねるイビンに、アリアンが刃心一族のチヨメと、そして姉を名前で紹介する。チヨメです、以後お見知りおきを。こちらこそ、よろしくね。そのあとの「ていうか、お姉ちゃんでしょ」「はいはい」が、この状況で唯一の息継ぎだった。
そして、まだ生きておったか、と声が上がる。この人も生きてるわ。こっちもです。他にもまだ息のある人がいるみたいよ。アークが放ったのがオーバーヒールである。
助けられた側はメープルの戦士だと名乗った。死体置き場に見えた場所から、次々と生存者が起き上がる。アーク殿は何でもありですから、という言葉に救われるが、裏を返せば、彼がいなければ全員そのまま数に入れられていた。
死んだ者を使って、アンデッドを生み出す実験
何があったのかと問われた戦士の答えが、里の看板をひっくり返す。どうやら私たちはヤコフに騙されていたようです。
内訳はこうだ。ヤコフは集めた者たちを採掘現場で死ぬまで働かせ、その上で死んだ者を使ってアンデッドを生み出す実験をしている。人の手でアンデッドを作り出したというのか。じゃあさっき私たちを襲ってきたのも、という問いへの答えは、その通り、だった。
保護施設が人材の供給源で、鉱山が消耗の場で、実験場が出口。第4話で気になっていた「帰り着いた者が一人もいない」の答えが、これ以上ないほど最悪の形で埋まった。
しかもこの説明は、この先の物語の下ごしらえにもなっている。殺した人をアンデッドにする方法があり、アンデッドを使役する方法もある。この二つを具体例つきで見せておくことに、きっと意味があるのだろうと思わせる置き方だった。
ヤコフが語った、里の始まり
鉱脈はリーザの一族が代々隠していた
ようこそ、エルフの戦士たち。当のヤコフが現れ、問われるままに全部を話してしまう。これだけの鉱脈をどうやって見つけたのか。答えは意外なものだった。ここは我が妻リーザの一族が、代々王家にも内密に隠し持っていたもの。
しかも隠していただけではない。彼らは魔晶石を密売し、財を成していたという。その秘密を守るために、村人によそ者と関わることを禁じていた。第4話で語られた「閉鎖的だった村」の理由が、ここで裏返る。
ただし、村人の多くも鉱脈の存在は知らなかったらしい。知っていたのは村長の一族だけ、という構図である。
では、お前はどうやって鉱脈に気づいたのだ。この問いへの答えが、この回の芯だった。私ではありません。偉大なるあのお方です。あのお方が気づき、手に入れるよう私に命じられたのです。
被害者の側にも、まったく無傷ではない過去がある。天使のように優しいと評判だったリーザの一族が、密売で財を成し、村ごと外を拒んでいた。この作品のこういう手つきが好きだ。誰も彼も、そう単純ではない。
魔獣の仕業に見せかけて、村長とその一族を暗殺した
よそ者がどうやって村に入り込んだのか。ヤコフの説明は理に適っていて、それが余計に腹立たしい。山奥の村が外部との接触を完全に断つことなどできません。薬も道具も、外から手に入れなければならないものは山ほどある。
そこで狙われたのがリーザだった。世間知らずの田舎娘、手なづけるのは簡単でした。近づいて村を探り、鉱脈の在りかを突き止め、そして魔獣の仕業に見せかけて、村長とその一族を暗殺した。
数年前の魔獣襲撃という話そのものが、この男の偽装だった。リーザを生かしておいたのは、結婚して村長の財産と権力を手に入れるため。そして仕上げがこれである。エルフや獣人たちを保護する場所を作ろうと言ったら、リーザの奴、大層喜んでいましたよ。
優しさをそのまま部品として使われている。第4話で「ここに来ればもう安心です」と言っていたあの柔和な顔が、全部この計算の上に乗っていたことになる。なんて奴、信じられない、という声が出るのも当然だった。
最強巨神大ゴーレム
あのお方が授けてくださった大いなる力
あのお方とは誰なのか、という問いに、ヤコフは名を明かさない。その名を口にするのも恐れ多い。お前たちごときが知ることすら到底許されない存在。そのうえで、ここまで忍び込んできたその力は実験材料にふさわしい、上物のアンデッドとして献上しよう、と言い出す。
当然そうはならず、アンデッドはまとめて片づけられる。落ちた先が実験場の壁の中とは、お前にふさわしい墓場だな。役人に突き出そうかと思っていたが、それでは我の気が収まらんな。私もよ、アーク、とアリアンが続いた。
追い詰められたヤコフの切り札が、あのお方が授けてくださった大いなる力である。呼び出されたのは、見上げるようなゴーレムだった。
ここでアークが例によってつぶやく。ゴーレムとは本来、泥人形のことだったな。しかしあれだけ大きいと、泥人形というより最強巨神大ゴーレム。何またブツブツ言ってるの、行こうよ、と急かされるまでが様式美である。この緊張感の抜き方が、この作品の呼吸だ。
「アーク君と二人なら、やっていけるというわけか」
戦いの采配を執ったのはアリアンだった。ゴーレムを鉱脈へ誘導して。そして姉とチヨメには館の火を消すよう頼む。分断されていた面々が、それぞれの持ち場に散っていく。
誘導の先で待っていたアークが、この辺りでよかろう、と再びロックファングを放つ。洞窟で地形魔法を使うなと叱られた同じ技が、今度は狙いどおりに巨体を潰すのがきれいだった。
それを見ていたイビンの一言が、この回の彼女の答えになる。アーク君と二人なら、やっていけるというわけか。変な虫がついてないか見に来ただけ、と言っていた人が、妹の相棒として合格を出した瞬間である。
一方のヤコフは、ゴーレムに向かってあのお方にあだなす者どもを始末するのだと叫び続けていた。力を借りている側が、最後まで自分の言葉で戦っていないのが印象に残る。
「恐怖! 地底に蠢く死霊の影」まとめと考察
力尽きて倒れたところに、ヤコフが居ただけ
決着のつき方が、この回でいちばん語られている部分だと思う。崩れ落ちたゴーレムの下に、ちょうどヤコフがいた。しかし、あれは一体何だったのだろう。ゴーレムの最後でしょ、何か変だったわよね、という会話が後から交わされる。
そこへ差し込まれるのが、偶然よという断定である。力尽きて倒れたところにヤコフが居ただけだって。であるよな。そうよね。全員が、そういうことにしておこうとしているのがはっきり分かる間だった。
第4話のサブタイトルは「呪いの里に聖女の霊が彷徨う」で、あのときは幽霊の正体が死の穢れだったと説明されて終わっていた。だが今回、もう一度だけ説明のつかないものが動いている。利用され、殺された村の人々を、いちばん最後に守ったのは誰だったのか。
視聴者の側でも、妻の最後の抵抗のように押し潰されたという受け止めが並んだ。断定を避け、偶然で片づけたまま終わらせたのが良い。言わないことで、いちばん強く言っている幕引きだった。
心得ました、タナトス様
そして最後に、視点だけが敵側へ移る。支援していたローデン王国内の拠点を失ったという報告に対し、返ってくるのは大勢に影響はないという一言だった。そのうえで、チャロスにも計画の実行を伝えよ、と命じられる。
受けた側の返事で、この回は終わる。心得ました、タナトス様。姿も目的も明かされないまま、名前だけが置かれた。ヤコフが最後まで口にできなかった「あのお方」の名である。
直前にヒルク教の説明を挟んでおいて、締めで拠点をひとつ失っても大勢に影響はないと言い切れる規模の相手を出す。第1話からのこの一連は原作にない筋立てだったが、結果として、この先へ向けた土台をまとめて敷いていったことになる。
後日談は静かだった。助け出された人々はそれぞれの故郷へ送り届けられ、イビンは次の任務があるからと去っていく。去り際の独白がまた良くて、手加減されていたことに気づかないなんて、まだまだね、アリンちゃん。もし本気だったら、と考えて、私も精進しなくちゃ、と続く。そしてまだアリンちゃんを渡すわけにはいかないからね。
何を話していたのか、と聞かれても、いえ別に何も。ずいぶん遠回りしてしまいましたし、では改めて呪いを解く泉へ。本来の目的にようやく戻る形で、この長い寄り道が閉じた。次回からが本番である。




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