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第5話のサブタイトルは「ガールズ・ロアー」。部屋にこもったアラキが妹のステラに打ち明けたのは、外へ出てやり直したいという願いだった。ステラは道端に倒れていた湯田博士から研究の本当の目的を聞き、川べりでスザクから彼女が自分に課した使命を聞かされる。そして夜の宝探しで、ステラ自身の夢が動き出す。




やり直せるかもしれないから
ゲームにそんなやる気あったっけ?
第5話は、部屋から出てこないアラキにステラが声をかけるところから始まる。「アラキ、生きてる? お腹空いてない?」「食べ終わったらお風呂にも入ったら」と世話を焼く言い方で、この二人が兄と妹であることが今回はっきり示された。ネットにも「5話になって初めて知った」という声が上がっている。
ステラが「そんな落ち込むとかどうしたの? ゲームにそんなやる気あったっけ?」と聞くと、アラキは「あったよ」と返す。「楽しいのは実験に参加してからだけど。前よりできること増えたし」。制限が外れて力が伸びたぶん、負けたときの落ち方も深くなっていた。
第4話でアラキが仲間の気持ちを置き去りにしたことを思えば、この引きこもりは当然の帰結でもある。ただ今回の主役はアラキではない。この会話でステラが受け取ったものが、そのまま一話ぶんの物語になっていく。
外に行きたい理由
ステラが踏み込んで聞く。「どうしてアラキはそんなに外に行きたいの?」。返ってきたのは「やり直せるかもしれないから」だった。何をやり直すのかと重ねると、「いろいろ。今の自分とか」と続く。
アラキにとって外の世界は、景色でも自由でもなく、今の自分から降りるための出口だった。第4話で「俺だって役に立ちたい。みんなみたいに」と漏らしていた劣等感が、そのまま外への渇望に変換されている。
ステラは「あんなに落ち込むなんて」と言葉を飲み込む。兄の願いの中身を知ってしまったせいで、この日から彼女は自分の側の空白に気づいていくことになる。引きこもりの回だと思って見始めると、まったく別の話が立ち上がってくる作りだ。
湯田博士が語った研究の目的
今の姿のまま外に出ること
出かけたステラは、道端に倒れている湯田博士を見つける。倒れていた理由は「調べ物に没頭しちゃって、寝るのも食べるのも忘れちゃって」というもので、「もしかしたらゴールが一気に近づいたかもしれなくてね」と嬉しそうに言う。
ステラはすぐ「今すぐにでもアラキを外に行かせてあげられますか?」と聞いた。博士の答えは「今すぐは難しい」。ショウセイやマオのようにラムスを失ってもすぐに命の危険がない子なら可能かもしれない、と付け加える。
そのうえで博士が語ったのが、研究の本当の目的だった。ラムスは失うものではなく「君たちの一部、個性だ」。ラムスを体に保ったまま外に出ることこそが目指す場所であり、行くかどうかは本人が選べばいい、けれど今はその選択さえできないのだから、まず選択肢を持ってほしいのだ、と。研究者の顔と大人の顔が同時に出てくる、いい場面だった。
羽田空港と、クルスの話
博士は外の世界の話を続ける。「いろんなものが見られるよ。会ったことない人にも会えるし。北も南も海の向こうも空の向こうも」。ステラが「私、外なんて…」と言いよどんだそのとき、目に入ったのが一枚の写真だった。博士はさらりと「羽田空港だよ。飛行機が好きなら最高の場所だよ」と言う。
そのあと博士は逆に質問する。「君のお兄さんと、ことぶきクルス君って仲はいいのかい?」。ステラの答えは「クルスが一方的にアラキを慕ってるというか。私や他の子たちのことは見えてないような感じですけど、アラキにだけは懐いてて」。そしてクルスは全身がラムスで、そのために成長ができないことも明かされた。
あの幼い姿は年齢ではなく、体のほとんどがラムスであることの結果だったわけだ。第3話から執着を見せてきた人物の輪郭が、ここでようやく一段はっきりする。博士がなぜ今それを聞いたのかは、まだ明かされていない。
スザクが自分に課した使命
私にはあなたの方が眩しいけど
帰り道、ステラは川べりで水質調査をしていたスザクと会う。この前のことを謝ろうとすると、返ってきたのは「なぜ謝るの?」だった。気にしていない、いや気にしているでしょう、という押し問答のあと、スザクは「正直に思ってることを言ってもらえるのは気持ちがいい」と言う。
そこでステラが打ち明けたのが本音だった。「私にも前は夢があってさ。だから夢を語れるスザクのこと、羨ましいってなっちゃったんだ」。いい学校に通い、家も裕福で、夢を追える環境にいる相手が眩しかったのだという。しかも自分の家は「両親も遠い親戚の人たちだし、今でもお互いよそよそしい」のだと続けた。
返ってきたのは「私にはあなたの方が眩しいけど」。理由は「あなたには私にできないことができるから」。互いに相手の持っているものだけがよく見えている構図で、しかもどちらも嘘をついていない。この会話が刺さったという反応が並んでいたのもよく分かる。
死にたくないから
スザクのラムスは喉から下だという。つまりダストが届かなくなれば、その部分はまるごと消えてしまう。作中では、左半身がラムスだった人が外の学校へ行きたいと町を出て、そのまま帰らなかった話も語られる。境界線を越えた瞬間に、ラムス化した部分は無くなるのだ。
だからスザクは動く。「でも本当にこのままダストに頼り続けていいの? ある日突然亡くなるかもしれないのに」「今ある科学と医療の力で生き延びる方法を得たい」。理由は驚くほど率直だった。「だって怖いから。死にたくないから」。そして「夢なんて甘い。責務と言っていいかもしれない」「私は生きる方法を掴んでみせる」と言い切る。
このあと、スザクの親から電話が入る。父のためにかき揚げを作った話をしたあとで、「あなたもちゃんと食べてる? 生活費は足りない?」と気遣う母。「そっちは今何時?」と互いの時間を確かめ合う距離にいて、スザクは親元を離れて一人で暮らしている。
ステラが羨ましがった「夢を語れる人」は、実際には夢を語っていたのではなかった。生き延びるための宿題を自分に課して、それを夢と呼んでいただけだ。裕福さの内側もまた、外から見えていたものとは違っていた。
夜の宝探し
今日は5人で行こう
夜、ゲームに招集がかかる。相手はフェブラリー・ロアーズ。ステラが遅れて合流すると、真っ先に確認されたのはアラキのことだった。「来てないの?」「ううん。ご飯は食べたけど」。結論は「仕方ない。今日は5人で行こう」。ポリスホッパーは一人欠けたまま夜へ出る。
湯田博士が出した課題は宝探しだった。「これから君たちに博士くん人形を見つけてきてもらいたい」と言い、レーダーまで用意してある。最初の一体は近くの池の中だと出て、ハルトが「爆速で泳いで見つけてくるぜ」と飛び込んだものの、人形は無かった。
顔見せの回が続いたぶん、ここに来てチームの性格の違いが動きに出るようになった。フェブラリー・ロアーズはケイが人形の位置を当て、キョウコが運び、スザクが判断を出す。役割が最初から噛み合っていて、見ていて気持ちがいい。
待って! 私にやらせて!
次の一体は高砂橋の上にあった。「あんなとこどうやって?」と誰もが手をこまねくなか、フェブラリー・ロアーズが先に動く。ケイの「私を橋まで運んで」という求めにキョウコが応じ、スザクが「任せる」と判断して、「この勝負もらった」と持っていかれそうになる。
ポリスホッパー側は「俺が撃ち落とすか」という案に傾きかけた。そこへ声を上げたのがステラだった。「待って! 私にやらせて!」「今日はちょっと足掻いてみたい」。
走り出したステラの独白が、今回の芯だ。「私にもまだ間に合うかな。夢を見ること」。行けないと諦めて、興味なんかないと言い聞かせて、自分で夢を閉じ込めてしまった。「でもそんなのはもうやめる。諦めたくない。自分の思い通りに生きてみたい。だから走る。今までよりも一番早く」。俊足という設定が、ここで初めて意味を持った。
「無茶しすぎ」と呆れられても「どんなもんよ」と返す。第4話で兄に「私たち、外に行くためだけに遊んでるわけじゃない」と言った人が、今度は自分のために走っている。同じ足の速さでも、意味が入れ替わっていた。
隕石のかけらと、青いアヤメ
ダストが濃い場所を探せ
二本目の課題は隕石のかけら集めだった。「この新葛飾には隕石のかけらがそこかしこに散らばっててね」「一番大きいものを見つけたチームの勝ち」。レーダーでは感知できないが、かけらにはメビウス・ダストが含まれているので、ラムスキャリアなら感じ取れるはずだという。
すぐに出た方針が「ダストが減りにくい場所に行けばいいんじゃない?」。ここでスザクが単独で動き出し、仲間からは「感知なんてしたことねーし!」「ていうか自分が欲しいだけじゃん!」と突っ込まれる。台詞に水元公園という実在の地名が出たのもこの流れで、彼女が向かったのはそこよりもダストが濃いという水路沿いだった。
そしてこの課題の答えを出したのが、ほかでもないスザクだった。冒頭でステラと会ったときにやっていた水質調査が、そのまま伏線になっている。実在の土地を舞台にしてきたことが、ここで初めて謎解きの材料として効いてきた。
おかえり、スザク
スザクの読みはこうだ。ダストの濃い水路沿いでは、花の色や匂いが変わる。「特にそこの青色のアヤメ。あれは確実にダストの影響を受けている」。色の変わった花の真下に大きなかけらがある、と当たりをつけて、そこを掘らせた。
そして「ここから先は私だけで行く。一人で大丈夫」「みんなここまでありがとう」と、仲間を置いて奥へ進んでいく。戻ってきた彼女を迎えたのは、責める言葉ではなく「おかえり」だった。「もう私まで心配した」と言われて、スザクはまた「なぜ」と返している。
「やっぱりスザクだって」「嘘ついたくせに」「うん」「いいけどね」。そして「見つけたいものちゃんと見つけたんでしょ」。かけら探しにかこつけて彼女が本当に探していたものが何なのか、仲間は分かったうえで見逃している。勝ったのはフェブラリー・ロアーズで、ポリスホッパーはこれで三連敗になるのだが、今回に限っては勝敗の重みがずいぶん軽い。
「ガールズ・ロアー」まとめと考察
二人の少女が、それぞれ前に出た回
サブタイトルの「ガールズ・ロアー」は、まずフェブラリー・ロアーズのチーム名から来ている。今回のアイキャッチもスザクとキョウコの二人が描き下ろされていて、公式の側もこの回を彼女たちの回として置いていた。
ただ、吠えたのはロアーズだけではない。閉じ込めていた夢を自分で開けたステラも、生き延びる方法を掴むと言い切ったスザクも、どちらも今回はじめて自分の言葉で前に出ている。アラキが不在だったからこそ成立した回だった。
そして今回いちばん大きな収穫は、ステラの夢がパイロットだと分かったことだ。「私、諦めてたけどやっぱり私も外に行きたい。パイロットになる夢追いかけたい! だから一緒に行こう! 一緒に飛行機乗ろう!」。博士が見せた羽田空港の写真が、ここで効いてくる。しかも彼女はそれを、外に出たいと願っていた兄に向けて言った。
「行くなら私も行くー!」「オレも」と仲間まで乗ってくるのが、このチームらしくて良かった。第4話ではアラキ一人が外を向いていて、そこがずれの原因になっていた。今回、同じ方向を向いた人間が一気に増えている。
最後に見た光景
ところが終わり方は不穏だった。「誰か…誰かが泣いてる」という声に続いて、「その子は俺の妹です」という言葉が置かれる。それが何なのか、いつのことなのかは説明されないまま幕が下りた。
公式も放送後に、ラストでステラが見た光景は何だったのか、そしてアラキはなぜ午前3時にアラームをかけていたのかという二つの謎を、わざわざ並べて置いていた。答え合わせは次回以降ということになる。
今回は戦いらしい戦いがほとんど無い回で、その代わりにダストを失えばラムスの部位ごと消えるという設定の重さが正面から出てきた。外に出ることが自由の獲得ではなく、体の一部を捨てる選択でもあるという前提が置かれたぶん、次にアラキが部屋から出てくるときの意味も変わってくるはずだ。地味な回に見えて、いちばん動いたのはたぶんここだと思う。




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