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喪失編、最終回。氷の牢での尋問、二層から降りてきたレイド、次々と倒れていく仲間たち。何もかも失った少年に、エミリアは二人の物語を語り直し、「お願い、あなたの名前を聞かせて」と手を差し伸べる。「俺がナツキ・スバルだ」。シリーズの原点に重なる、タイトル回収の第77話を振り返る。




氷の牢と、崩れる前提
「出来損ない」への尋問
偽物と看破されたスバルは、氷の牢に囚われていた。「潔く罪を認めなさい、出来損ない」とラムは容赦なく、プリステラに他人へ化ける大罪司教がいた前例を根拠に、中身の入れ替わりを疑う。「俺は記憶喪失だ!」という訴えは、火に油を注ぐだけだった。
「その顔と声で、レムを忘れたなんて、もう一度でも」。妹に繋がる最後の糸を断たれかけたラムの怒りは本物で、エミリアが必死に間へ割って入る。話をしよう、という彼女の願いだけが、辛うじて場を繋いでいた。
ラムの疑いは何一つ不当ではないのが苦しいところだ。レムの記憶の器であるスバルの「忘れた」が、彼女にとってどれほどの絶望かを思うと、責める言葉が見つからない。
レイド、降りてくる
そこへ、いるはずのない男が現れる。「何だこりゃ、気持ち悪い部屋だな」。二層の試験官レイドが、下の層まで降りてきたのだ。上の階から動けないはずでは、と問うスバルに、男は嗤う。「その前提が崩れてんだよ」。心残りをひとつ片付けたら、塔を出て行くとまで言い放つ。
暴威の前に立ったのはユリウスだった。「エキドナ、アナスタシア様を頼んだ!」と叫び、単身でレイドを引き受ける。「試験の続きだ。オレが飽きる前に、もぎ取ってみせろや、おめえ」。勝ち目のない斬り合いが始まった。
塔のルールそのものが壊れ始めたという、最悪の報せだ。満身創痍で名前もない騎士が、それでも殿を買って出る姿に胸が締め付けられる。
崩壊する塔、折れる心
仲間たちの、最期
混乱の中、致命傷を負ったエキドナは「痛い、痛いな。人の体は痛い」と呟き、アナに死の恐怖を味わわせずに済むならと、その痛みを「唯一の恩返しだ」と受け入れる。ベアトリスは牢から連れ出してくれたことも忘れたスバルに、「たとえスバルが忘れても、ベティが忘れない」と告げた。
やがてエミリアの前に現れたスバルは、吐き出すように叫ぶ。「死んだ! 両足が吹っ飛んで、痛いのと血が足りなくて。ベアトリスもそうだ! ユリウスも、行け、頼むとか。馬鹿だ、みんな馬鹿だ。一体何を期待してるんだ?」。記憶にない男のために命を投げ出す仲間たちが、彼には理解できなかった。
誰もが最後の瞬間まで、スバルを責めるどころか託し、信じ、謝っていく。その優しさが記憶なき彼には呪いのように響くという、この章の残酷さの集大成だ。
「愛してる」の嵐
耳元では、メィリィの声が「死んじゃえば?」と囁き、闇の中では魔女の「愛してる」が幾重にも重なって降り注ぐ。追い詰められた少年の口から、ナツキ・スバルの核心がこぼれ落ちた。
「愛されてることは知ってた。父さんもお母さんも、心の底からオレを愛してくれてた。だから、いっそ消えてしまいたかった。両親に愛されてるのに、愛される価値のない自分を愛せるはずなんてなかった」。記憶を失ってなお、自己嫌悪だけは体に染みついている。「死んでおくべきだったんだ」とまで、彼は追い込まれていく。
記憶が消えても消えなかったものが「自分を愛せない」ことだった、という掘り下げが痛烈だ。1期から積み上げてきたスバルという人間の根っこを、最終回で真正面から抉ってくる。
私の名前はエミリア
二人の物語の、語り直し
そんなスバルに、エミリアは静かに語り始める。王都の盗品蔵での出会い。徽章を取り返そうとして襲われたところを、スバルが身を挺して助けてくれたこと。屋敷での日々、デートの約束、王都での大喧嘩。なんで優しくしてくれるのか分からなくて怖かったこと。そして、駆けつけてくれた彼が何と言ってくれたか。
「私は全部覚えてる。スバルの言ってくれたこと、してくれたこと、しようって約束してくれたこと。全部覚えてるの」。それは1期から続く、二人の物語の語り直しだった。
視聴者が7年見てきた歩みを、エミリアの目線でなぞり直すこの会話劇が本当に美しい。記憶を失った本人より、周りの方が彼を覚えているという逆転が、この章の答えになっていく。
「お願い、あなたの名前を聞かせて」
それでもスバルは「俺じゃなくてもいいだろ」と首を振る。ナツキ・スバルがどれだけ情けなくてクズか、俺が誰より知っている、と。エミリアは頷きながら、こう返した。スバルより強い人も頭のいい人もいる、「でも、私はどんなときでも一緒にいるのはスバルがいい」。
こんな美少女に惚れて、それが力の源だったのか、と自分自身に呆れながら、少年は答えを見つける。「私の名前はエミリア、ただのエミリアよ。お願い、あなたの名前を聞かせて」。「俺の名前はナツキ・スバル。ユリウスに託されて、ベアトリスが信じて、エキドナが許して。エミリア、君に願われるその男の名前がナツキ・スバルなら、俺がナツキ・スバルだ」。
落ちていくエミリアへ自ら飛び込み、手を取ってからのこの名乗り。記憶を「取り戻す」のではなく、ナツキ・スバルを一から「やり直す」と決めた覚悟の宣言に、ネットの反応も涙一色だった。
「Re:ゼロから始まる異世界生活」まとめと考察
ここからが、始まりになる
迫る脅威に飲まれながら、スバルは言い切る。「いいや、終わりじゃない。これが、ここからが、きっと始まりになる」。「俺が覚えてる。全部覚えてる。たとえ君が忘れても、俺が君たちを忘れない」。忘れられる痛みを知る仲間たちへ、今度は自分が覚えている側に立つという誓いだ。
エミリアに名前を尋ねた1期3話「ゼロから始まる異世界生活」と、エミリアから名前を尋ねられた本話「Re:ゼロから始まる異世界生活」。挿入歌の「STYX HELIX」から1期EDの特殊ED「Stay Alive」への流れも含め、シリーズの原点をなぞり直す構成に、ネットの反応は「神回」「タイトル回収」の大合唱となった。
77話かけてのサブタイトル回収は、長く追ってきた者ほど刺さる仕掛けだ。喪失で始まった章が「始まり」の宣言で幕を引く、この対句だけでもう満点である。
幕間と、奪還編へ
幕間のミニコーナーでは、王都でのフェルトとラインハルトの護送任務が描かれた。この10日間で6回も野盗に襲われる珍道中、護送されているのはプリステラで捕らえられた大罪司教とおぼしき女。不気味な鼻歌と慇懃な語り口に、フェルトが心底うんざりする一幕だ。
公式からは《奪還編》が8月12日より放送開始とのアナウンスも。仲間たちの命、メィリィの謎、レイドの異変、そしてスバルの記憶。積み上がった全てを取り戻す後半戦を、万全の気持ちで待ちたい。






















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