このペースなら年内にも原種は殲滅できる…ただし一体を除いて。12年前に姿を消した原種ゼロ号という新たな謎を抱えたまま、EXCEEDSは海外の死の大地へ飛ぶ。狙いは原種3号と4号、そしてその足元にある魔人化薬のプラントだ。ところが同じ夜、同じ施設には魔人狩りの一同も忍び込んでいた。第5話「遭遇」を振り返る。




世界を回るEXCEEDSと、姿を消した原種ゼロ号
騎士たちと、事務総長リイン
極東支局の担当範囲にいた危険な原種は、すでに全て駆除が完了している。だから今のシイナたちは、海外支局に出張しながら世界中の原種を倒していく日々だ。冒頭は、その道中で顔を合わせた面々の紹介から始まる。海外支局で重要な役職に就いているという八神総督の騎士たち…なのはやフェイトとは顔見知りで仲が良く、「皆さん仕事に責任を持って頑張って、八神総督を尊敬してる。かっこいい大人って感じ」とシイナは評する。「なのちゃんたちより小さい子もいたのはちょっとびっくりだったけど、私より先輩だし立派な大人だった」…この一言だけで誰のことか分かってしまうのが、長く続いたシリーズの強みである。ネットでも「新規絵のヴィータちゃん達を久々に観られた」と喜ぶ声が上がっていた。
そして本局の事務総長を務めるのがリイン。シイナいわく「八神総督の娘さん。実の親子ではないけど、全くの他人でもないとか」「確かに、なんとなく似てるかも」…この含みのある紹介の仕方が心憎い。銀髪の指揮官という佇まいも相まって、古参の視聴者ほどにやりとさせられる登場だった。
12年前に消えた、原種ゼロ号
そのリインが語る戦況が、今回いちばんの新情報である。「このペースで駆除が進めば年内にも原種の殲滅は可能です。ただし、一体を除いてですが」…その一体こそ、原種の中でも最も古く存在が確認された個体、原種ゼロ号。12年前に所在地から突然姿を消し、現在まで行方不明だという。「行方不明になった12年前から、ゼロ号の活動は確認できるのか」「確認できていませんが、生存しているのは間違いないんです」…その根拠が不穏極まりない。ゼロ号の幼体や副産物が、継続的に闇市場に流れているのだ。「国家か、あるいは魔人を擁する組織か。そういった人たちがゼロ号を隠して利用している可能性が高いです」。
原種の危険度もここで改めて語られる。繁殖期ごとに数百億の卵嚢を生み出し、放たれた幼体は空を飛んで風に乗り、広がりながら植物と生物を食い尽くす。残った害獣の死骸からは毒が出て生態系を壊し、その被害から新たな侵略種が生まれ定着する…「植物と昆虫の厄介なところを合わせたような繁殖方法」という説明に、シイナの「なんかもう、原生生物に対する悪意しかないっていうか」がこぼれるのも無理はない。裏を返せば、ゼロ号さえ片付けば世界の危機は大幅に軽減される。この作品が最後に倒すべき相手が、静かに提示された回でもあった。
死の大地へ、そして魔人狩りも同じ場所へ
原種3号と4号、その足元の魔人化薬プラント
シイナへの次の依頼は、「2体で1対の危険個体、原種3号と4号。まとめて撃破をお願いします」。目標地点は海外で、侵略種と人間の戦いによって汚染され特級危険地区に指定された、生物が生存できない死の大地だという。そしてそこには魔人化薬の生成プラントがある…原種の素材が取り放題で、しかも普通の人間には近づけない。悪党にとってこれ以上ない立地というわけだ。
ところが同じ場所を、まったく別の側からも狙っている一団がいた。魔人狩りである。「この施設に篠宮と蔵木が出入りしているのが確認できました」「地下には研究施設のような場所もあるらしくて、ここがトワさんが子供時代を過ごした施設の可能性も」「魔人化薬の製造元で、トワさんの家族の仇」…調査を担ったのは移動能力者のユズで、正確な場所までは特定できなかったため、原種2体の中間あたりに扉を開いて手分けして捜索する段取りとなる。互いに相手の存在を知らないまま、同じ夜、同じ施設に踏み込むことになった。この噛み合わせの妙が副題の「遭遇」に効いてくる。
セツナがくれた力
移動中の機内が、この回のもう一つの見どころだ。操縦席に入り浸るなのはに「飛行機好きだよね」と笑うシイナは、「なのちゃんとは飛行機とかバトル関連の話をよくするんだけど、フェイちゃんとは家族の話をよくする」と打ち明ける。フェイトから「セツナさんは趣味とか好きなものってあったんですか?」と聞かれ、「料理とか菜園とか、他にもいろいろ、作るのとか育てるのが好きだったかな」と答えるシイナ。そして続く言葉が重い。「たくさん話してたつもりだったけど、元気なうちにもっと話してみようかなと、話しておきたかったなって思ってることすごくある」…「わかります」と静かに受けるフェイトの相槌が、この二人の距離を物語っている。
独白はさらに踏み込む。「現実で見た最後のセツナは悲しい顔だったし、今も時々心配をかけてる気がする」「セツナがくれたこの力がずっと残るものなのか、いつか消えちゃうものなのか、それは分からない。すごい力だけど、どこかで限界が来たり、何かの危機が来たりして、消えちゃうかもしれない」…そのうえで彼女はこう結ぶ。「でも、それでいいのかも。自分らしくやれるだけのことをやって、仲間や友達の力になって、いつかセツナが頑張ったねって笑ってくれるように。それまでは全力で頑張るんだ」。力の出どころがセツナであること、そしていつか失うかもしれないと本人が覚悟していること。派手さはないが、この作品の芯に触れる場面だった。
両者、ついに接触
建物の中に、5人
現場が近づくと、この距離でも圧が伝わってくる。「なんかプレッシャーあるね」「強敵そうです」…と、そこで爆発が起きた。探査をかけると、3号と4号から少し離れた場所…残存している建物内と地下、3カ所に全部で5人の反応がある。「なんで人間がいない場所なんじゃ」「人間がいるなら駆除はできませんね。先に避難を呼びかけないと」…3カ所あるので手分けして向かうことになる。ここで律儀に人命を優先するのが、この組織の色である。
一方の魔人狩り側は、施設をあらかた調べ終えていた。「やはり侵略種の素材や卵を一時確保する場所みたいですね」「こっちはもう使われてない場所みたい」…そしてトワが下した判定が「私がいたときに子供時代を過ごした場所じゃないね」。仇の本丸ではなかったわけだ。そこへ「待って、空から何か」「誰か来ます」…とっさの指示が的確である。「シオリの霧は一度遮断」「みんな隠れて。特にユズはなるべく離れて、見つからないように」「見つかって戦闘になったら迅速に無力化。なるべく怪我をさせないように」。殺し屋を名乗る集団が、まず「怪我をさせるな」と言うのだ。
剣を向けられても諦めない、高町式の交渉
接触したのは、なのはだった。「こんばんは、国連の者ですが」「国連調査機関EXCEEDSです」「どなたかいらっしゃいますか」…この霧が視界遮断と通信阻害の能力で、映像も音声も記録できないと知らされても、返すのは「そうなんだ、すごいね」。あくまで「これから近くにいる大型侵略種の駆除をしますので、避難していただけたら」と用件を通そうとする。対する相手は「悪いけど無力化させてもらう。国連とか警察のやつでしょ。別に悪いとか思わないから」…関節を外されても「ジャケット再起動」「よし、治った」で立ち上がり、「説明して避難してもらわなきゃだけど、またあれ食らったら嫌だな。火力上げていくか」と、あくまで説得を諦めない。ネットが「剣を向けられても話し合いを諦めない高町式交渉術、令和でも健在」と沸いたのも当然だった。
そして現れたトワの問いが鋭い。「そちらのお仲間には、炎の魔人能力を使う方がいるのか?」「機密事項なのでお答えしづらいんですが」「答えてください」…「あなた達は魔人化薬を使って作った魔人を兵士として利用していますか?」。ここになのはの答えが真正面から返る。「魔人化薬の流通については私たちも対策しなければいけないと認識しています。でも私たちの役目は、今は原種の駆除ですし、この世界の人たちの平和と安全を守ることです」「私たちEXCEEDSの職員や関係者に、魔人化薬を使ってる人はいません。信じてもらえませんか?」。そして極めつけがこれだ。「うちのエースの魔人能力者さんは、悲しい事情で魔人になってて、それでも自分の意志で協力してくれてるんです」…名前は出さないが、シイナのことである。
「自分のためでもありますから」
さらになのはは、頼まれてもいない忠告まで残す。「そちらの炎の魔人がどういった方なのかは存じ上げませんが、自爆や自壊の可能性がある脆弱で危険な能力かもしれません。どうか注意してください」「その方や周囲の人が、悲しい運命をたどらないように」…トワにとってこれ以上ない急所であることを、なのはは知らない。前回描かれた通り、トワの義両親は暴走した炎の魔人によって命を落としているのだ。この皮肉が、静かに効いてくる。
結果、剣を交えたはずの二人は交渉のテーブルに着く。トワは「切りかかったお詫びの代わりに、駆除のお手伝いをしていきます」と申し出て、「どうかお気遣いなく」と遠慮されると「自分のためでもありますから」と言い切った。「私たちを追いかけて捕まえますか?」「その権限が私たちにはありませんから」…なのはが「魔人化薬の撲滅が目的なら、協力し合える道はありませんか?」と踏み込んでも、返ってきたのは「大きな組織は信用できません」「私たちの邪魔をしないでください。この施設は破壊させていただきます」。歩み寄りきらないのがトワらしく、それでいて確かに何かが繋がった応酬だった。
「遭遇」まとめと考察
4号を捕食した魔人狩りと、動き出す篠宮
結末は驚きから始まる。「原種4号が駆除されたって」「え?」「なのちゃんと話した魔人狩りの人がやっつけてくれたみたいなんだけど」「魔人狩りの人、めちゃくちゃ強くない?」…宣言通り手伝っていったわけだが、大型の原種を単独で仕留めてみせる戦力は明らかに規格外である。ネットでも「原種駆除、魔人狩りの人強すぎる!!」と驚きの声が並んでいた。
そして本当に怖いのは、それを見ていた側だ。ラボの観測係からの速報を受けた篠宮マナが動き出す。「原種3号4号のところの施設が壊されて、3号と4号も倒された」…そこから彼女が拾い上げたのは、EXCEEDS側の炎の存在だけではなかった。「魔人狩りたちも動いてたみたいで、魔人狩りのリーダーが、どうもうちのラボ出身の子っぽいの」「4号を倒して捕食したって」。そして一言。「この子を回収したいんだけど、エイジ君、方法を考えてくれない?」「なるべく早く、無傷の状態でだろ」「やってみるか」「まあ余裕だろ」「さすが親友」…トワが仇を追っていたはずが、いつの間にか仇の側から「回収」の対象として名指しされてしまった。追う者と追われる者が入れ替わる、実に嫌な引きである。
全体としては、両陣営の邂逅という節目でありながら、あえてシイナとトワは会わせない構成が徹底されていた。街で友達になった二人が、それぞれの立場で同じ夜に同じ場所にいて、すれ違ったまま終わる。そのうえで魔人狩り側には「EXCEEDSに炎を使う者がいる」という情報だけが残り、篠宮の側にはトワという新たな標的が生まれた。派手な決着を期待した向きには物足りなさもあったようだが、対話で始まった関係が今後どう転ぶのかを考えると、この静けさはむしろ不気味である。原種ゼロ号の行方も含め、盤面が一気に広がった一話だった。






















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