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伝説のパーティーは第5話ですでに顔を合わせている。それなのに副題が「10年ぶりにパーティが揃った」なのは、ヒーラーを数えていなかったからだ。その4人目は王妃になっていて、しかも王宮の壁を拳でぶち抜いて出てくる。一方、決定的な証拠を見つけたのはただ食べたかっただけの狼で、扉の仕掛けは子供の背の高さに合わせて作られている。第8話を読み解く。




「ここは弟子の私に任せて」が、タイトルの三度目の反転になっている
前回の引きをそのまま受けて始まる
第8話は、前回の最後に置かれた二つの台詞から始まる。セルリスの「ここは弟子の私に任せて」と、シアの「ロックさんが出るまでもないであります」。この作品のタイトルは「ここは俺に任せて先に行け」から来ているので、看板の台詞を弟子が代わりに言っていることになる。
この反転は今回が初めてではない。第5話でセルリスは「城のことは私たちに任せて」と言い、第5話の終盤ではエリックとゴランが「ここは俺たちに任せて先に行け」とラックを送り出している。ただし今回だけは、意味が逆になっている。前の二つはラックを先へ行かせるための台詞だったが、今回はラックを出さないための台詞である。
ランクの自称と実態がずれている
相手の手下は「Bランクの俺たちがな」と名乗り、「Fランクの弟子とは笑わせるぜ」と煽る。ところが打ち合ってみると一撃が重く、追いつけない。「貴様、本当にFランクか?」と聞かれたシアの答えが「あなたこそ本当にBランク?」だった。
種明かしも丁寧で、シアは「シア・ウルコット、ヴァンパイアハンターの戦士でありますよ」と名乗ったうえで「私は一言もFランクだなんて言ってないであります」「それに、セルリス殿がFランクなのは本当でありますよ」と付け加える。嘘はついておらず、相手が勝手に低く見積もっただけという整理になっている。
前回、この用心棒たちは自分で「そいつはギルドを抜けた時のランクだ」「今の俺たちはBランク相当」と言っていた。自称を盛る側と、名乗らない側が、そのまま強さの差になっている。締めのシアの「Bランクを名乗るなら、もっと真剣に修行なさい」が効くのはそのためだ。
お手柄を立てたのは、ただ食べたかった狼だった
ラックが動くのは子供を盾に取られてから
劣勢になった手下が最後に取った手が、子供を盾にすることだった。ここで初めてラックが動く。「子供を盾にするとは、とことん根性の腐った野郎だな」に続けて、「こいつはお前が騙したミルカの分だ」と言い添えているのがいい。前回の誘拐の落とし前を、ここで一行だけ回収している。
駆けつけた官憲への名乗りは「ロック、通りすがりのFランク戦士だ」。第5話でヴァンパイアの上位個体に「Fランク冒険者のロックだ」と名乗り、前回は「ベテランFランク冒険者だ」と言っていた人である。肩書きを隠すやり方が、もうこの人の癖として定着している。
引き出しの中身を見つけたのはガルヴ
屋敷の捜索が始まると、ガルヴが特定の引き出しの前で動かなくなる。カビーノは「その引き出しに触るな」と止め、鍵はないと言い張るが、実際は魔法で施錠されていた。開けてみると入っていたのはハムに見える塊で、シアだけが「これはハムではないのでは」と気づく。
正体は霊獣の肉だった。シアの説明では、ユニコーンやペガサスのような霊獣を冒涜的な殺し方をして呪いをかけた品で、噂では人の精神を乗っ取る儀式や、魔人を召喚する儀式に使うものらしい。「もう、持ってるってだけでとんでもない罪じゃないの?」に対する答えが「ええ、まず一生外には出てこられないでしょう」で、金貸しの悪事の話が、いきなり儀式の話に切り替わる。
そして落ちがきれいだ。「お手柄だぞ、ガルヴ」と褒められた本人は、ただ食べたかっただけである。前回、霊獣の狼として保護された経緯があるので、霊獣の肉に反応したこと自体は理屈が通っている。それでも、決定的な証拠を見つけたのが空腹だったというのは、この作品らしい脱力の入れ方だと思う。
王宮の壁に、拳で穴を開けた人がいた
壁の向こうから声がする
屋敷に戻ったあと、ラックは地下道の修復に向かう。前回応急処置だけしてあった壁を崩そうとしたところで、向こう側から声がした。「や、やあ、レフィ」「え? その声、まさかラックなの?」。顔を見る前に、名前で当てられている。
レフィは10年前の同じパーティーのヒーラーで、今はエリックの妻、つまり王妃である。名前は第4話から出ていたが、正体が明かされたのは第6話で、本人が画面に出るのは今回が初めてになる。会いたがっていると言われ続けていた人が、壁の向こうで待っていたという登場の仕方だった。
ヒーラーが壁を殴って壊している
この王妃、壁を拳でぶち抜いてから声をかけている。理由が「誰かいますかって聞くより、穴開けて確かめた方が早いじゃない」で、まったく悪びれていない。ラックの評が「変わらないなあ。そういうガサツというか、大雑把なところ」で、10年ぶりの再会の第一声が壁の壊し方についてのダメ出しという始まり方になる。
レフィの返しも早い。「ラックだって変わんないじゃない。ていうか、逆に若返ってない?」。ラックが「まあ、いろいろあってな」と流すと「ずるいわ」で終わる。10年ぶんの説明を求めないのが、旧パーティーの距離感として気持ちいい。
なお、彼女がその部屋にいた理由も本人が説明している。「エリックが今日はこの部屋に入るなって言ったんで、逆に怪しいと思って待ってたの」。工事の危険から遠ざけたかった夫の配慮が、そのまま疑いの根拠になっている。この夫婦は、心配の伝え方だけがいつも下手らしい。
秘密の扉が、低い位置に作られている
秘密通路が愛人の家につながっているという誤解
駆けつけたエリックの第一声が「レフィ、あなた家の中で走って」で、返事が「走ってないわ」。走っている。そのうえで通路の説明が始まるのだが、エリックが「これはロックの家と行き来するための」と言った瞬間、レフィの「ロック? それどなた?」が刺さる。
言い淀んだところに愛人の家という言葉が飛び出して、「愛人、へえ」という一番怖い相槌が返る。ラックが「待った待った。レフィ、ロックっていうのは俺のことだ」と割って入り、自分で説明し直すことになった。偽名で暮らしていることの実害が、初めて笑いとして出てくる場面である。
オチは「そうならそうと、最初から私にも説明してくれればよかったのに。こんな面白いことを」。エリックの「そういうと思ったよ」という力ない返しに、「国王様も王妃様には頭が上がらないのでありますね」という感想が乗り、勇者の唯一の弱点という言葉で締められる。
手をかざす場所の高さ
扉の仕掛けはミスリル製の盾で、道具屋で買ってきたものを置くだけ。「盾が飾られてるようにしか見えないだろ?」という擬装である。通行できる人は手をかざして登録する方式で、エリックが挙げたのは自分とレフィ、そして娘たちだった。
ここで「ずいぶんと低い位置にあるんだな」という指摘が出る。答えは説明されないまま、「低い位置につけたのは、王女様たちが手を伸ばしやすいからですね」と横から補われる。作った本人は何も言わない。レフィの「こういうところ、ロックは昔からよく気がつくのよね」が、10年前からそうだったという保証になっている。
仕上げの魔法錠も細かい。八重にかけたうえで、魔道士にも見えない錠を二重に足している。「解除不可能ですよ、尊敬します」と言われる出来だが、その厳重な扉の入口が、子供の背の高さに合わせてある。この一点で、秘密通路が軍事施設ではなく家族の通り道だと分かる。
10年ぶりの「おかえりなさい」を、偽名で受け取る
ゴランが来て、全員が揃う
そこへゴランが顔を出す。セルリスから地下通路の補修に行っていると聞いて来たそうで、行き止まりになっていて困っていたらしい。ついでに通行許可を登録して、この部屋に旧パーティーが全員そろう。
レフィの「ねえ、何年ぶり? 全員揃ったの」に、シアの「伝説のパーティー、勢揃いであります」が重なる。戦場ではなく、家の壁の前で揃っているのがこの回らしい。第5話でエリックとゴランが復帰したときも同じ言葉が出ていたが、あのときは戦いに向かうための集合だった。
名前を直されてから言われる
この回でいちばん短くて、いちばん重いやり取りがここだ。レフィが「忘れてた。やっとこの言葉が言えるわ」と切り出して名前を呼ぶ。ラックが「ロックな」と偽名に直す。そのうえでレフィが「おかえりなさい」と言い、ラックが「ただいま」と返す。
帰ってきたのは10年前で、この人は最初から生きて戻っていた。それでもおかえりなさいを言う役の人が、この場面まで登場していなかった。しかも本名では受け取れないので、いったん偽名に直させてから言われている。ややこしい手順を一つ挟むぶん、言葉のほうが強くなっている。
続けてラックが礼を言う。「この前の神聖結界、助かったよ。おかげでハイロードを倒せた」。第6話ではエリック経由で伝えるかどうかという話になっていた礼が、ここで直接渡された。レフィの返しが「うん、あなたたちの背中は任せて」で、ヒーラーの立ち位置がそのまま一行になっている。
一件落着の裏で、王都の前提が崩れている
結界を無効にする品が出回っている
お茶が出て、子供たちが下がったところで話が変わる。エリックが最重要機密として出したのは、宮廷魔道士と錬金術師の報告だった。先日襲撃してきたアークヴァンパイアが、神聖結界を無効にする品を持っていたという。
しかも性質が、ラックがハイロードとの戦いで浴びた昏き神々の加護と同じらしい。これを使えばアークどころかロードクラスまで王都に入り込める。この作品がずっと守りの根拠にしてきた王都の結界が、もう前提として使えない。「もうすでに入り込んで活動を開始しているのかもしれん」という一行で、安全な場所が一つ消えた。
攫われた子供たちが何に使われるはずだったか
ここで前半の事件が線でつながる。あのハムが魔神召喚の儀式用だとすれば、攫った子供たちを生贄にしようとしていた可能性がある、という読みが出る。前回、子供を売り払うという話だったものが、もっと悪い用途に置き換わった。
そして規模の話になる。町のチンピラのような男が単独でやれることではなく、大きな後ろ盾が必要で、おそらくは貴族。荒っぽい手は使えないので、エリックは「いざとなれば、私の委任状を用意する」「秘密裏に内偵を進めてほしい」と頼む。殴って解決する段階から、身分を使って探る段階に移ったことになる。
まとめ|副題が数えている4人目と、セルリスが実家へ寄った理由
3人ではなく4人だった
副題は「10年ぶりにパーティが揃った」である。ところが、ラックとエリックとゴランの3人は第5話ですでに顔を合わせていて、そのときにも伝説のパーティーの復活だと言われていた。今さらこの副題を出す理由が、見終わるまで分からない作りになっている。
答えは単純で、ヒーラーを数えていなかっただけである。前衛が二人と魔導士が一人では、パーティーは揃っていない。第5話で揃ったのは戦う顔ぶれで、今回そこに回復役が加わった。しかも当のヒーラーは王妃になっていて、もう前線には出てこない。揃ったと言えるのが、戦場ではなく家の中しかないというのが、この作品の10年である。
服を取りに行っていた
もうひとつ、この回は伏線を一本だけ静かに置いている。買い物の帰り、セルリスは実家に寄ると言って別れ、屋敷には服を持って帰ってきた。「実家から服持ってきたのか」と聞かれて「え? うん、まあね」とごまかし、そのあと妙に張り切って風呂掃除を手伝おうとする。
答えは最後に出る。帰宅したラックが見慣れない少女に「どちら様?」と言い、それがミルカだった。「私の子供の頃の服、ぴったりだったわ」で、実家に寄った理由が全部つながる。攫われかけた子に、その日のうちに新しい服が用意されていた。誰も善行として説明しないまま、行動だけが先に済んでいる。
それでもミルカは、掃除は自分の仕事だと言って譲らない。「セルリス姉さん、掃除は俺の仕事だぜ」と言っていた子が、着替えたあとも同じことを言っている。家に置いてもらった側が、家の仕事を手放さない。事件の裏に貴族の影が見えてきた回の締めが、夕食の支度の取り合いだというのは悪くない着地だった。





























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