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石龍の後押しで、漫研は夏のコミティア出展を決断。手島の挙げた条件を一つずつ攻略していくが、最後の関門は言いたいことを言えない藤森の母だった。旅館の勉強会で藤森が差し出したのは、一冊の漫画のお手紙。伝説の1000部事件から舞浜オチまで詰まった第5話「みんなで行こう!~漫画に「想い」をこめよう」を振り返る。




コミティア出展、交渉開始
先生の「ダメ」を条件整理で崩す
コミティアの熱気を語る相に、石龍が「創作オンリー。二次創作もコスプレも禁止」と補足を入れる冒頭から、話は一気に転がり出す。「手島先生、漫研でも参加できますか」「ダメに決まってるでしょ」…理由は明快だ。それなりのページ数を用意する時間があるのか。学業第一で無理に描かない約束はどうした。東京なら泊まりの旅行で、旅費もかかるし親の許可が要る。
ここで相の切り返しが光る。「てことはさ、無理のないペースで本を作れて、学力を落とさず、親の許可を得て、お金が用意できればいいんでしょ」…次のコミティアは8月で2ヶ月後。7月の期末試験まではちゃんと勉強し、試験後の1ヶ月で12ページくらいのコピー本を作り、親の許可をもらう。「そんなに難しいことかな」。ぐうの音も出ない条件整理に、手島は「私は反対ですが、いたしかたなく前向きに検討いたします」…この時点で勝負ありである。
徹夜の計画書と「勘違いしないでよね」
次に現れた手島が配ったのは、徹夜で作った旅の計画書だった。コミティアは申し込み数次第で抽選になること、落選の可能性まで踏まえ、「今のうちに親御さんに見せて許可を得てください」と完璧な段取り。「めっちゃノリノリやんけ」とからかわれると、「かっ…勘違いしないでよね!」と返す始末で、反対したはずの人が一番楽しそうである。ネットでは計画書に保存用まで付けてくれたことも話題になっていた。
なお石龍はとっくに個人で申し込み済みで、当日は別ブース。しかも毎回壁…会場の壁際に配置される人気サークルの常連だという。「申し込み期限は来週まで」…各自、親の説得タイムが始まった。
親の許可、最後の関門は藤森家
三者三様の関門突破
許可取りは三者三様だ。「漫画を描いてそれを販売する? 高校の部活としてどうなのだ」と理詰めで問う父には「販売じゃなくて頒布っていって、お金が一番の目的じゃ…」と用語から説明。店の親父は「店の手伝いするならいいぞ」の一言で即決。「成績が下がるようなら中止するって」の条件付きオーケーもあり、勉学最優先の念押しはどの家庭も共通ながら、思いのほかあっさり関門は開いていく。
手島も「皆さん、承諾得られたようですね。あとは藤森さんだけですが」と集約しつつ、「釘を刺しますが、期末試験では結果を出してくださいね」と教師の顔も忘れない。そう…残る関門は、漫研で一番口の重い藤森の家だけなのである。
言い出せない藤森と、旅館の勉強会
「ココロ、今日は学校で何かあったかい?」…母に問われても、藤森は何も言えない。そこで浮上したのが、みんなでテスト勉強をする案だ。部室は「赤福、漫画しか読まないでしょ」で却下、赤福の家はチビの弟たちがいて無理、お母さんがうるさい家もダメ…と消えていく中、藤森がぽつり。「みんなと一緒なら…」。かくして期末試験に備えた勉強会は、藤森の実家の旅館で開かれることになった。「試験勉強ならしょうがないね」と母も快諾し、「ココロがお友達連れてくるなんて初めてだよ」と声も弾む。
だが夕食の席で漫研の話が出た途端、空気が一変する。「あんた、いつから漫研なんて入ったんだい?」「何考えてんだい? あんた美術部だろ? そういうことを勝手に決めるんじゃないよ」…かばおうとした相たちも「あんたたちは黙っておいで」の一喝で沈黙。藤森の母、想像の三割増しで怖いのである。
石龍光という劇薬と、漫画のお手紙
「おばさん、僕たち客なんだけど」
凍りついた場を動かしたのは石龍だった。「おばさん、僕たち客なんだけど。ここの旅館、デイユースやってるでしょ。今ネットで予約したの」…客と言われれば女将は無下にできない。「保護者の許可もない高校生だけで…」には、自分の母へ電話して「ママ、旅館の人に一言言って」と保護者確認まで即手配。そして正面からこう言い放つ。「ココロちゃんの気持ちは、ココロちゃんのものでしょ」。
「石龍さん、かっけえ!」「先生でも怖いおばさんでも言いたいこと言うよな」と沸く一同に、彼女は「ヒカルちゃんって呼んで」…ここまでは痛快な劇薬ムーブである。
「僕の友達は漫画だけ」
だが直後の独白で、この子の輪郭が変わる。「何にもカッコよくないよ。あの人は悪人じゃないし、今頃きっと傷ついてる」「僕は言いたいことは何でも言えるけど、人との距離がよく分からない。いつかきっと、あなたたちのことも傷つける」「僕の友達は漫画だけ。漫画だったら、もっとうまく言えたのに」…言えない藤森と、言えてしまう石龍。正反対の二人が同じ不器用さを抱えていることが、静かに示される。
後日、出発前夜には相の処女作『ネコタとニャンタ』を読んで「これ、最高」と即答する場面も。「僕は上手いだけの漫画は嫌い。漫画に人を感じたいな。僕は友達がいないけど、漫画でなら人と繋がれる。漫画が僕の友達なの。アイちゃんの漫画とは友達になれたよ」…この作品の芯を担うキャラクターだと思う。
「お母さんへ」…漫画で失礼します
そして藤森は、母への想いを一冊の漫画にして手渡す。「お母さんへ。お母さん、あのね、お話があるの」…怒られると怖くて何も言えなくなる。まるで海の底に沈んだみたいに息が苦しくて、口も開けられない。お母さんの嫌いなヘアピンは、お父さんが子供の頃にくれた大切なもの。お母さんが怒ったあの子たちは、初めてできた友達なの。アイドルもテレビもファッションも、同じものを好きになれなかった私は、漫画が一番好きなの…。
漫画の中では、仲間たちも紹介される。自由で元気のいい案を出す安海さん、素直で鋭い意見の赤福さん、ものすごいセンスで憧れの石龍さん。「みんなといると苦しくないし、私が私でいられるような気がします」…そして結びの一言がいい。「口ではきっとこんなふうにしゃべれないから、漫画で失礼します。みんなと一緒に漫画を描かせてください」。
読み終えた母の返事は、「勉強せずにこんな漫画描いてたのかい」…からの、「いつでも部屋は貸すから、ちゃんと勉強して、また描いてくれよ」。承諾書は無事に手島のもとへ届いた。おまけに藤森が「石龍さんのおかげです」と手を差し出せば、握手に不慣れな石龍が固まり、「愛を知らないモンスターかよ」のツッコミが飛ぶ一幕も。ヒカルちゃん、初めての握手である。「いいことあったんなら、よかったね。あと、光ちゃんって呼んで」…友達の輪が、また一つ広がった。
「みんなで行こう!~漫画に「想い」をこめよう」まとめと考察
1000部事件と、ファミレスの愛おしい時間
後半は小ネタの豪雨だ。手島に小テストの出来を叱られたのは、なんと石龍。「留年されてるんですから」…「はーい。漫画ばっか描いてたら留年しちゃった」とあっけらかんで、同学年なのに一つ年上の謎がここで回収される(勉強会では「50点以上初めて取った」の快挙も)。抽選は無事通過し、サークル名は王島南高校漫研。新刊会議では、石龍の「僕は午後は他サークル回りたいから、1000部しか刷らないよ」に釣られかけた一同を、手島が全力で止める。「待ちなさい! 私も初めての時、1000冊作りました。1冊しか売れませんでした。思い切って捨てるまで部屋が狭かったです」…実体験の説得力が違う。職員室のコピー機で制作費は浮き、頒価は1冊100円。ペンネームは「俺も仲間に入れてくれよ」と赤福も加わり、「3人で作ったんですものね」の3人合作名義に決まった。
白眉は手島の追想だろう。「先生もファミレスでネーム描いてたんですか?」…「描いてましたね。家では集中できず」「脳が沸騰してくると外の景色をぼんやり眺め」「幸福というのとはちょっと違うかもしれませんが、愛おしい時間でした」。そして出発前夜、興奮で眠れなくなった相は「こんな時、漫画の主人公なら…自分の漫画を描く」と夜通しペンを走らせ、ふと漏らす。「なんかファミレスみてぇだな」…先生の愛おしい時間を、時を超えて追体験するのだ。徹夜を案じる手島も「本を出すのはいいんじゃないですか? 趣味なんだし」と、相だけの本の追加を認めてくれた。
幕切れは「おい、やすみん、これ見ろ! 朝食取り放題だ、東京すげぇ」に対する手島の一言…「東京じゃありませんよ。コミティアの会場近くではいい宿が取れず…ここ、舞浜なので千葉です」。ネットでは「初参加で千部はダメ絶対」「今回も泣かされた」の声に加え、クセ者漫画家役の水瀬いのりら声優布陣への称賛も。言えない想いは漫画に乗せればいい…タイトル通りの一本を経て、次回はいよいよコミティア当日である。




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