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第6話は、路地裏で追い出されたルーチェにエルマが割って入るところから動き出す。差し出された餞別は地面にばらまかれた10万ゴルドで、エルマはそれを拾わせない。初のパーティーメンバーを得たエルマが向かうのは、推奨レベル50のダンジョンだ。そこでルーチェの幸運が引き起こす連続ドロップが確認され、元のパーティーが何を手放したのかがはっきりする回である。




「彼女がパーティーから抜けると聞こえてきてな」
ぶっ壊れスキルツリーの持ち主だ
第6話は、前回の路地裏の続きから始まる。もう無理だから、新しいところでも頑張れよ。スキル構成ミスってレベルも上げられなくなった手詰まりのやつを、誰が仲間にすんのかは知らないけど。戦力外通告の言い方が、いちいち丁寧に嫌だ。
金の切れ目が縁の切れ目とはよく言ったものだ、スキルポイント制度はなんと残酷なことか。そう総括しながら、エルマだけが別のものを見ていた。血まみれの剣がドロップするとはなという彼らの会話が、そのまま手がかりになる。
何度もダンジョンに潜ってやっと出たレアドロップだからな、本当にお前のスキルのおかげか怪しいもんだ。その言葉を聞いてエルマが立てた仮説がこれだった。このスキル持ちを追い出す奴がいるか。だが話を聞くにあれしかない。俺の予想が当たっていれば、彼女はぶっ壊れスキルツリーの持ち主だ。
捨てられている理由そのものが、拾う理由になっている。前世のゲーム知識を持つ主人公の強みが、戦闘ではなく人選で出るのが良い。第5話のラストから続く場面だが、今回はここから一気に動いた。
レベル23、ソロの重騎士
悪い、と割って入ったエルマの名乗りは短い。彼女がパーティーから抜けると聞こえてきてな。それならばとスカウトに来たわけだ。
当然、止められる。おいおい正気か、そいつは戦闘力が低すぎてまともにレベルを上げられないんだぞ。返事は大丈夫だ問題ないの一言だった。後悔すんなよ、と言われても揺るがない。
その無能を引き取ってくれるならこっちも心が痛まなくて済む、いいぜ勝手に連れてけよ。この上から目線に対して返ったのが、お前に許可は求めてないである。今回いちばん短くて強い一撃だった。
レベルいくつだ、他に仲間いんのか。レベル23、ソロの重騎士。一応E級冒険者だ。その場の空気が変わる。ソロでその数字は普通ではないからだ。
相手の物差しでは説明のつかない情報だけを、淡々と置いていく。やっぱりやめといた方が、と言いかけたルーチェにも、同じ調子で大丈夫だ問題ない、と返す。六話目にしてようやくメインヒロインが動き出した、という手応えがあった。
地面にばらまいた餞別
穏便に出て行ってくれるなら都合がいい
面白いのは、送り出す側の内輪の会話が省略されていないことだ。E級冒険者がわざわざルーチェを熱心に勧誘するなんておかしくない?と、リースが引っかかる。やっぱりあれの効果って大きいんじゃ、と。
だがクラインは取り合わない。本当は意味ねえんだよ、黙って行かせておけばいいんだよ、今穏便に出て行ってくれるなら都合がいいだろ。そもそもソロの重騎士がレベル23まで上げられるわけないだろ、大方どっかのパーティーから追い出されたんだよ、それかナンパ目的か。
ルーチェのやつ顔だけはいいから、という言い草まで出る。そして本音が漏れた。さっき言ったやつを追い出したなんて悪い噂が立つと、俺らにとってもよくねえだろ。
手放す理由が、最後まで自分たちの体裁でしかない。疑問を持った側もそれで納得してしまう。この短いやりとりだけで、ルーチェがどんな場所にいたのかが分かる作りだった。
「自分でばらまいたものは自分で拾ってくれ」
見送りの一言は、いかにもそれらしい。エルマ、君みたいな人を待っていたよ。ルーチェのことを頼んだぜ。そのうえで、今までまともな武器も買ってなかったんだろ、なあルーチェよ、と続けて10万ゴルドを地面にばらまく。この10万ゴルドは俺たちからの餞別だ、うまく使ってくれ。
拾おうとしたルーチェを止めたのがエルマだった。いや、拾うな。クラインとやら、自分でばらまいたものは自分で拾ってくれ。子供でもできる。
そして止めを刺す。ましてや地面にばらまいたものを餞別とは。笑わせる。行こうルーチェ、ああいう手合いには少しでも借りを作らない方がいい。
捨て台詞は、ハズレクラスと無能同士、仲良しごっこしてろ、だった。そのあとリースが、じゃあこのお金私が貰ってもいい、と聞いて即座に断られる。最後まで誰も損をしたくない人たちとして描き切ったのが徹底している。
初のパーティーメンバー
「私に一目惚れしたから助けてくれたんですか」
よろしく頼むルーチェ、という一言に添えられた独白が良かった。俺に初のパーティーメンバーができた瞬間だ。五話かけて、ようやくソロが終わる。
そのあとの店での会話が、この子の人となりを一気に見せる。私なんかをパーティーに誘ってもらっちゃって、ありがとうございます。でもその、私やっぱり実力不足かなと。
ところが数秒後には別方向へ振り切る。そこで思ったんですけど、もしかしてエルマさん、私に一目惚れしたから助けてくれたんですか。どうしてレベル上の人がかばってくれるんだろうって、私ずっと考えてたんですけど、それしかないかなって。私そんな軽い女じゃありませんからね。
卑屈なのに、容姿にだけは自信があるという配合が絶妙だ。自己肯定感が低いのは後天的なもので、元は高かったのだろうと思わせる作りになっている。視聴者からも、いろいろとキツいキャラだなあ、と愛のある評が出ていた。
「ルーチェ、スキルツリー『幸運』持っているんだろ」
盛り上がった話を、エルマは一切拾わない。何の話だ。そして本題を置く。ルーチェ、スキルツリー『幸運』持っているんだろ。
スカウトの理由が容姿でも同情でもなく、最初から一点だけを見ていたことがここで確定する。追い出した側が持て余していたものを、こちらは名指しで取りに来ている。
ようやく物語が本題に入った、という感触がはっきりある回だった。ここまでは主人公が一人で強さを証明する話が続いていて、同じ形の場面を繰り返し見せられている感覚もあった。相方ができるだけで、見え方がまるで変わる。
ダンジョンとは、眠れる創造神の悪夢である
アルザロスの見る悪夢、ゆえに夢の穴
ここで世界観の説明が入る。マジックワールドにおけるダンジョンとは、眠れる創造神アルザロスの見る悪夢である。
アルザロスは悠久の時を経て、無から数多の神と世界を作った。だが永遠にも等しい時間の中で、絶対の神であったアルザロスは正気を失い、自身の生み出した神々によって封印されることになってしまった。
それでも悪夢は残る。アルザロスの悪夢は、異形の化け物、魔物を生み出す門を現実世界に作り出している。それがダンジョンであり、ゆえに夢の穴である。
封じたはずの神の見ている夢が、いまも世界を侵している。ここまで攻略とレベル上げの話が続いてきた作品が、六話目でようやく世界の底を一段見せてきた形になる。設定として綺麗なので、いずれ本筋に絡むのだろうと思わせる。
天使の玩具箱、推奨レベル50
二人が向かったダンジョンの名が天使の玩具箱、入口の表示は推奨レベル50である。ルーチェのレベルからすれば、まともに考えれば無謀だ。
だがエルマの言い分は明快だった。推奨レベルは50だが、ここに出てくる魔物の情報は頭に入っている。そうそう危険な目には合わない。俺たちはあくまで低階層でレベルを上げるだけだ。
推奨レベルという表示を、額面ではなく中身で読み替えている。ゲーム知識という設定を、こういう地味な使い方でも回してくるのが好きだ。危ない橋を渡っているように見えて、実はいちばん安全な選択をしている。
人に見せるものじゃないスキルツリー
サイコロで6が出ないと使えない
道中、ルーチェが自分のスキルツリーを開いて見せる。あまりそれは人に見せるものじゃないんだが、と止めるエルマに、エルマさんはわざとばらまくような人じゃないってわかりますし、と返す。
そして理由が続く。期待してもらって後で失望されるより、先に見限ってもらった方が楽と言いますか。この一言の重さで、前のパーティーでどう扱われてきたかが伝わってくる。
中身も確かに厳しかった。唯一の攻撃スキルが、サイコロで6が出ないと使えない。せめて曲芸系と攻撃力上昇にポイントを振っていればよかったんですけど、と自嘲が続く。
先に自分を下げておけば、下げられたときに傷が浅い。処世術としては分かるのに、見ていると苦しい。この痛々しさを最後まで演じ切っているのが、今回いちばんの見どころだった。
「大丈夫だ、ルーチェ。お前が必要なんだ」
それに対するエルマの答えが短い。大丈夫だ、ルーチェ。お前が必要なんだ。慰めでも励ましでもなく、必要だと言い切る。
そのうえで方針を告げる。今回の探索で軽く3000万ゴルド稼いで、ルーチェをレベル30まで持っていくぞ。桁が違いすぎて悲鳴が上がるが、本人は本気である。
装備も先に整えていた。買い与えられたナイフは攻撃力プラス3で市場価値55万ゴルド、攻撃成功時に相手の防御力を15パーセント軽減してダメージを与える。硬い相手に攻撃を通しやすい、という一点に絞った選び方だ。
ルーチェの側も、ちゃんと自分で腹をくくっている。ここまで来てしまったのも私の判断です、こんな高価なものを買ってもらっちゃったんだし弱気になっちゃダメですよね。役に立てているとアピールしたがる姿が必死で、そのぶん健気だった。
ツギハギベアと、連続するドロップ
「爪と噛みつきに注意しろ」
最初の相手はツギハギベアだった。見かけは可愛いのにレベルは可愛くないですね、というのが第一声である。エルマの見積もりは細かい。あれだと攻撃力22、万が一ルーチェが一撃もらっても体力は残る。クリティカルが出ればさすがに耐えられないが、攻撃モーションに入った瞬間に体勢を崩せば完全に阻止できる。
なんでそこまですぐわかるんですか、と聞かれても説明はしない。俺が奴の攻撃をさばく。ルーチェは死角から攻撃して倒してくれ。使っているのは、マッドヘッドから得たポイントで取得したスキルだという。
そして飛ぶ注意が、爪と噛みつきに気をつけろよ、である。戦い終わってからルーチェが一言。ツギハギベアって別に爪も牙もないよ。
張り詰めた戦闘指示のあとに、この落差を置いてくる。この作品はギャグの見せ方が思いのほか丁寧で、文字で出るオノマトペや表情の付け方が効いている。主人公が終始クールなぶん、相方の顔がよく動くのも今回の収穫だった。
幸運値を500パーセントアップする特性スキル
異変はドロップの方に出た。落ちたのはベアシールド、防御力プラス12、市場価値20万ゴルド、可愛らしいクマの丸盾である。まあ一応もらっておこう、と受け取ったところで、二枚目が落ちる。
そんな連続でドロップするアイテムじゃないんだが。ドロップ率を間違えて覚えてるのか、と自分の記憶まで疑い始めたところで、エルマが答えにたどり着く。
ルーチェの持つ特性スキルは、幸運値を500パーセントアップさせる。そこへルーチェの初期幸運値が純粋に上振れを引いているのであれば、このような偏りもありえなくはない。血まみれの剣がドロップするわけだよな、と冒頭の会話が回収される。
戦闘力ではなく、確率そのものを書き換える性能だった。エルマの知識が武器や敵だけでなく、アイテムのドロップ率にまで及んでいるからこそ気づける。ああルーチェ、俺と組んでくれて本当にありがとな、という言葉が、この場面ではきちんと重い。
「道化師ルーチェ」まとめと考察
なぜクラインたちは気づけなかったのか
この回でいちばん面白いのは、エルマが自分に投げた問いだと思う。だったら、なぜクラインたちはこのドロップ強化に気づけなかった。
答えは意地悪なほど納得がいく。初期パーティーだからありがたみに気づかなかったのか。この世界では魔物の情報も少ない。最初からドロップ率がいい状態に慣れてしまっていたのだろう。
つまり彼らにとって、あの引きの良さはずっと当たり前の風景だった。比較する相手がいなければ、恵まれていることには気づけない。戦闘力という一つの物差しだけで人を測っていた結果、自分たちの土台を自分で捨てたことになる。
追放ものの「ざまあ」を、感情ではなく仕組みで説明しているのが良い。クラインたちは意地悪だから損をしたのではなく、見えていなかったから損をした。同じ理屈で、エルマは前世の知識という比較対象を持っているから拾えた。全26話のうちの六話目にして、この作品の芯がやっと形になった感がある。
レベル20と、次の獲物
成果は数字にも出た。ベアシールドを今日中に10枚集めちゃいますか、とはしゃぐルーチェに、いや、レベルも十分上がった。ここからが本番だとエルマが告げる。気づけばレベル20である。本当ですいつのまに、という反応が正直だった。
そして今回の本命が明かされる。これから俺たちは今回の目標、ナリキンラーナを狩る。3000万ゴルドという最初の宣言が、ここでようやく現実味を帯びる。
ここでもうひと押しのギャグが入る。ルーチェの力は俺が思っていた以上だった、という言葉に、いやこれもまだ力の一端にすぎない、と乗ってくる相方へ、違う、ベアシールドの話はしていない。装備しないぞ。しんみりさせて終わらせないのがこの二人らしい。
次回予告は、ゲームにはボーナスキャラがいないとな。金策とレベル上げがようやく噛み合い始めたところで折り返しに入る。互いの真価をどこまで引き出せるかという、この作品が本来やりたかった話が、ここからやっと走り出す。




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