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第5話は、公国の侵攻が始まり王都に戒厳令が敷かれるところから動き出す。独房のリオンは囮の役目を続けながら、ルクシオンに「騎士道なんて建前でしかないだろう」と言い放つ。ユリウスたち五人の救出は全員空振りし、公国はもう一つの魔笛と超大型二体を投入。詰んだ状況で、その「建前」がそっくり裏返る回だった。




戒厳令、公国の侵攻が始まる
百隻の艦隊と数千のモンスター
第5話は敵側の総括から始まる。「魔装の確保に外道騎士の捕縛、そして魔笛とヘルトラウダ殿下。これら三つの要素が揃った今、公国の勝利は決定づけられました」。第4話までに積まれた駒が、まとめて数え上げられる。
報告はルクシオンから入った。「すでに100を超える艦隊と数千のモンスターが国境に襲来しています」。警備隊が気づかなかった理由も通信機の不調で連絡が途絶していたとされている。
王国側の見通しが甘い。「王都にまでは攻め込んではこれまい」、「あとは地方領主たちがどこまで奮戦してくれるか」「それほど被害は大きくなるまい」。後で分かるが、この楽観がそのまま被害の規模になる。
それでも王都には厳戒態勢と戒厳令が敷かれ、「市民の皆様は外出を控えてください」という放送が流れ始める。第4話まで学園の内輪もめだった話が、一気に国の規模へ広がった。
学園から人が引き上げていく
学園側の反応が生々しい。「急に帰れだって。いきなりかよ」「どういうこと」「何があったんだ」と、誰も事情を知らないまま呼び戻されていく。
アンジェの「リオンに連絡してくれ」という指示に、「捕まったままだし」と返るのが痛い。頼りたい相手が、制度の側に押さえられている。
マリエ側も同じで、「パパがすぐに戻ってこいって」という連絡が来る。「信じられないわ。まさか本当に戦争が起きるだなんて」という反応が、この世界の学生たちの平常運転を示していた。
戦争を予告されていたのはミレーヌ王妃との会話を知る一部だけである。情報が下りていないまま全部が動き出す作りが、この回の不穏さを支えていた。
独房の囮役と「騎士道なんて建前だ」
「思った以上に釣れましたね」
独房のリオンは囮の役目を続けている。ルクシオンの「思った以上に釣れましたね」に、「ああ、うさんくさい貴族がうじゃうじゃと」と返す。
寄ってくる連中の要求も分かりやすい。「ロストアイテムの動かし方を教えろ」、組めば助けてやる、お前をはめた奴を教えてやる、といった交換条件が並ぶ。「ミレーヌさんの読み通りだな」という確認まで入る。
ただし時間の余裕はない。ルクシオンの「しかし早く来てもらわないと、このままではいずれ処刑かと」で、囮作戦が本当に危ない橋だったことが分かる。
それでもリオンは動かない。「不満を持っているのは一部の貴族くらいで、みんなこの世界の現状に満足している」、だから「そこで下手に暴れたら、俺の方が悪者だ」という判断だった。
ルクシオンの詰問
動かない理由の締めが「これでも俺は騎士だからな」である。ここにルクシオンが噛みつく。
「王国の騎士など、貴族女性と王宮に都合のいい存在でしかありません」、そのうえで「それでも民を守るのがマスターの騎士道ですか」と問い詰める。
返ってきたのが「騎士道なんて建前でしかないだろう」だった。ルクシオンの評は一言、「情けないですね」。
この短いやり取りが、今回の骨格そのものである。同じ言葉が終盤でもう一度出てきて、そこで意味が完全に裏返る。冒頭で吐き捨てさせておく置き方が、いちばん効いていた。
五バカ王子、全員失敗する
順番に現れては空振りしていく
独房に代わる代わる顔を出すのが、ユリウスたち五人だった。最初に来たジルクの用件が「実はあなたを助けるよう、マリエさんに頼まれましてね」である。「これでも実家は宮廷貴族です。いろいろつてはあるんですよ」と請け合っていた。
次に現れた時には本人も捕まっている。「お前は反省しろと言われ、話を聞いてもらえませんでした」、リオンの「日頃の行いだよな」が刺さる。
グレッグは「実家にお前を出すように頼んだら、親父と喧嘩になった」、ブラッドは「家族と連絡が取れないんだ」と泣き出す始末で、リオンが「なんで俺が慰めてんだよ」と困る。クリスも剣聖である父に頼んで一蹴されている。
極めつけがユリウスだった。「母上に頼んだら、いきなり平手打ちだ」、理由が「いずれ義理の娘になるマリエの頼みです、と言っただけだぞ」である。「何がいけなかったんだ」と本気で悩んでいるので、リオンの「お前バカなの」も出るべくして出た。
「いつか必ず助け出してやるからな」
五人の共通点は、全員が自分の家に頼んで全員が失敗したことである。しかも大半はマリエに頼まれたからという理由で動いている。
それでも去り際の言葉は揃っていた。「バルトファルト。いつか必ず助け出してやるからな」。成果はゼロだが、宣言だけは全員が置いていく。
リオンの受け止めが「あいつら、何がしたかったんだ」で、この時点ではまったく響いていない。
ところが、この場面が終盤で全部効いてくる。笑わせておいてから伏線に変える運び方が上手く、今回の中でいちばん構成が利いている部分だった。
侯爵派の密約と、差し向けられた刺客
「好きに暴れさせておけ」
敵側の絵図がここで開示される。戦況の報告に対する反応が「問題ない」で、理由が「公国が攻め込んだ領地は、密約で引き渡しが決まっている」だった。
そのうえで「占領が終われば公国も矛を収めよう。そうなれば我々の出番だ」、「好きに暴れさせておけ」と言い切る。国境の領地と、そこに住む人間が丸ごと取引材料にされている。
神殿からの申し出も打算で処理される。「今回の戦いには聖女様も参加させたいと」という要請に対し、「その力を知らしめ、神殿の権威を高めるつもりだろう」と読んだうえで「この際、神殿の連中に恩を売るのも悪くない」と許可する。
目的は公爵の地位である。講和をまとめた功で成り上がるという第4話の絵図が、実際に国土を売る形で動き出した。
毒入りの酒
リオンのもとには直接の刺客も来る。「寂しいだろうと思って酒を持ってきてやったぞ」という差し入れだった。
リオンの断り方が良い。「悪いけどお酒はまだ飲まないようにしてるんだよね。なんならあんたが飲んだら」。中身が何なのかを、そのまま相手に返している。
そこで本音が出る。「いつまで意地汚く生きているつもりだ。騎士ならば潔く死ぬべきだろう」。返しが「できれば老衰で死にたいんだけど」だった。
激高して手を出そうとした相手を止めたのは、ルクシオンの「無駄ですよ」である。この作品の主人公は、独房にいても実質無敵なのだが、だからこそ自分から動かない理由のほうが重くなっていく。
ヘルトラウダと、もう一つの魔笛
実力行使と、ローランド国王
手詰まりになったジルクが最後に選んだのが直接行動だった。「いろいろと手は尽くしたのですが、ことごとく失敗しましてね」「仕方ないから実力行使だ」、上はグレッグとブラッドが押さえているという。
ユリウスの案内が「王族しか知らない秘密の抜け穴に案内しよう」で、リオンの「そんな秘密を俺に教えるなよ」が正論すぎる。
そのまま囲まれて終わる。現れたのがローランド国王で、ユリウスの呼びかけに「分かっている、このバカ者が」と返す。
脱獄未遂がそのまま王との会談に化けるのが面白い。五人の努力は結局ここでも実らないのだが、リオンが王の前に引き出される経路にはなった。
敵艦隊百五十隻と第二王女
告げられた戦況が重い。「敵の艦隊はおよそ150隻。鎧の数は不明。空を覆うほどのモンスターを率いているそうだ」。すでに戦艦十隻以上、鎧百機近くが撃墜されている。
リオンが引っかかったのはモンスターだった。「ヘルトルーデさんと魔笛はこちらが押さえているはずでしょう」。答えが「公国には別の魔笛があった、ということだろうな」である。
そして扱い手の名前が出る。「ヘルトルーデ殿下の妹君、ヘルトラウダ殿下だ」。第4話でヘルトルーデが独白の中で呼びかけていた相手が、ここで正面から出てきた。
リオンの反応が「それも初耳だぞ、おい」である。前世の知識が通じない要素がまた一つ増えた形で、この人の優位が着実に削られていくのが今期の流れになっている。
聖女マリエの限界
「やっぱオリヴィアじゃなくてもいいのよ」
神殿の要請で、マリエが最前線に立つ。「聖女としてのお力を示す時が来ました」と促され、「しょうがないわね。この私に任せなさい」と受ける。
内心はいつも通り打算だった。「ここで活躍しちゃえば、私に逆らえる人間はいなくなるわね」。それでも力そのものは本物で、前線は一時的に押し返される。
兵たちが「聖女様のお力だ」「勝てるぞ」と沸き、マリエ自身も「結構いけるじゃない。やっぱオリヴィアじゃなくてもいいのよ」と手応えを口にする。第4話まで偽物として描かれてきた立場が、一瞬だけ本物に見える場面だった。
公国側の評価も「聖女の力、本物のようね」である。つまり誰も嘘だとは思っていない。この持ち上げ方の直後に落とすので、余計にきつい。
空と海から挟み込む二体
ヘルトラウダが投入したのは、聖女でも届かない規模のものだった。呼び出しの前に置かれた台詞が「お姉様。お姉様の果たせなかった役目は、私が果たす」である。
公国側の評が「空の守護神様には、聖女とてなす術がないでしょう」、そして「あとは王国を蹂躙するのみ」。聖女は撤退し、王国艦隊も壊滅する。
ルクシオンの調査で全体像が出る。「超大型モンスターの反応は2つ。浮かんだ大地を挟み込むように、空と海から王都を目指しています」。通信障害の原因もこれだった。
リオンの「2体だと。どうなってんだ。それもあの乙女ゲーとは違うぞ」が、この回でいちばん危険な一言である。残り時間は二日と告げられた。
「建前が大好きでしてね」まとめと考察
師匠の騎士道と、リオンの答え
王からの問いは直球だった。「率直に尋ねよう。君なら勝てるか」。リオンの内心での答えは「正直詰んだな。ゲームオーバーだ」である。
根拠も明確に語られる。ルクシオンでは勝てず、倒せるのは本来の主人公であるオリヴィアだけ。しかしすでにゲームとは違う流れで進んでいるので、愛の力は発動できない。打つ手がないという結論だった。
そこへ現れたのが師匠である。逃げないのかと問われての答えが「私はこれでも王国の爵位と名誉を持った騎士ですからね」、そして「私の騎士道は大切な人々を守ることです。そのために最後まで戦い抜きます」。「どれほど勝利が困難でも」まで添えてくる。
問い返されたリオンの答えが、そのまま今回の題になった。「騎士道なんて建前ですよ。でも俺は、そんな建前が大好きでしてね。民を守る騎士道が大好きですよ」。冒頭でルクシオンに吐き捨てた同じ言葉が、否定から選択へ完全に裏返っている。
「手伝えルクシオン」
決断の理由が、力でも義務でもないのが良かった。「ユリウスたちだって捕まると分かってても俺を助けに来た。なのに俺だけ逃げるわけにはいかねえだろ」。全員失敗した救出劇が、ここで効いてくる。
ルクシオンの「彼らの馬鹿に影響されていませんか。その決断は理解不能ですね」に対し、「俺だって理解できないさ」と認めたうえで続けるのが上手い。
「でもここで逃げたら絶対に後で考えるんだ。ベッドで横になった時、あれでよかったのかと。悩み続ける人生はごめんだ」。正義でも復讐でもなく、後悔したくないからという理由で立ち上がる。この主人公らしい動機の置き方だった。
締めが「どいつもこいつも頼りにならないから俺がやる。手伝えルクシオン」で、受けが「やれやれ、しょうがないマスターですね」。冒頭で情けないと言った相手が、最後は普通に付き合っている。
なお、状況は何も好転していない。王は五人を拘束したままで、ルクシオンは「マリエは神殿に処刑されるようですね。聖女を語った罪として」と告げ、死者はすでに数万に上ると見積もられている。次回のサブタイトルが「嫌なら俺は逃げるだけです」なので、立ち上がった直後にまた突き放される展開になりそうだった。




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